第2話
ーー国王陛下視ーー
「おい、新しい私の銅像はまだできぬのか?」
「た、ただいま全身全霊で作らせておりますので、もうしばらくお待ちを!」
「そうか、なら良い」
あの女がいなくなり、本当に快適になった。誰も国王たる私に意見するものなどおらず、忠実な家臣の皆は私の言葉に誠意をもって対応してくれている。あの女にもこれができれば、文句などなかったというのに、実に惜しい女よ…
「陛下、よろしいでしょうか?」
王室長のジャックが、私のもとを訪れる。
「おお、ジャック!よく来たな」
「はっ。恐れ入ります」
ジャックはこの王国の人間の中でも、最も私に深い忠誠心を持つ男だ。能力も申し分なく、ゆえに私は大いに彼に信頼を置いている。
「それで、なにかあったか?」
「はっ。財政部長の席が空いてしまったのですが、誰も後を継ぎたいという者が現れないのです。いかがいたしましょう?」
「ふむ、なるほど」
財政部長は王国の財政をつかさどる、名誉ある職である。にもかかわらず、それに名乗りを上げる者がおらぬという事は、あの女が財政部長の職をそれだけ汚してしまったからにほかならぬ。…ええい、もう勘弁ならぬ!
「ジャック!今すぐあの女をこうそ」「陛下!」
私の言葉を、ジャックが遮った。
「な、なんだ?どうした、ジャック?」
「その財政部長を、私が指名してもよろしいでしょうか?」
ジャックが、指名とな…
「ふふふっハハハハッ!もちろんだとも!ジャックならば、最もふさわしい人物を見抜くことができよう!よし分かった!誰にするかはジャックに一任しよう!」
「承知いたしました」
ジャックは深々と頭を下げ、王室を後にする。いやはや、本当にあの男には感服させられる。私が願うことを、いつも一手先を読んで手を用意してくれている。私はジャックの忠誠心が嬉しくなり、思わず高笑いをする。
「ハハハハハハハハ!!!!!!!!」
…しかしそんな私に水を差すように、他の臣下のものが私のもとを訪れる。
「へ、陛下!よろしいでしょうか?」
「構わぬ。どうした」
「じ、実は陛下が建設を指示されているバルファーナ神殿に関してなのですが、どうしても予算が…」
「馬鹿者!!!それをなんとかするのが貴様の仕事であろう!!!」
「は、はいっ!!も、申し訳ございませんんんん!!!!!」
そう言い、足早に飛び出していく男。
「…全く、どいゆもこいつも…ジャックだけだな、私の気持ちを分かってくれるのは…」
私は大金をはたいて隣国より取り寄せた葉巻に火をつけ、一服する。これも国王が国王たる存在としてあるために、必要なものだ。これにさえ、あの女はケチをつけていたな…全く浅はかで反吐が出るわ…
「…さて、銅像に神殿。ますます忙しくなるのぉ♪」
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