第2話 「おはよ。」

〇7月2日(木)



 目覚まし時計にたたき起こされる。5時起きには慣れたが、つらいものはつらい。少しぐずぐずしてから布団を出た。


 朝食を食べ、学校へ行く準備をする。


 この学校の制服はブレザーで、結構かわいい。

 リボンを結んでいると、前日のことを思い出し憂鬱になった。どうにかして学校を休めないのか。体温を測ってみると、見事に平熱36度3分。どうしようもない。


「学校行きたくない。今日だけでも休ませてよ。」とお母さんにすがってみたが、許してもらえなかった。ちくしょう。


 そうこうしている内に時間はあっという間に過ぎ、ついに学校に到着してしまった。


「おはよー!」

「おはよ。」


 教室に入ると麻衣が駆け寄ってきて、カバンで隠しながら水色のノートを見せてきた。


「じゃーん!『美穂の初恋成就計画』です!」


 ひそひそ声で話してくれている。えらい。


「美穂と石田はほぼ接点ないでしょ?なら、最初の一歩は挨拶からだね。」


 おなかが痛くなってきた。もうやめて。


「あと10分くらいしたら、石田が来るよ。その時ね!」


 ああ、いやだぁ。かんべんしてよ。


 たまらず、私はトイレに逃げてしまった。

 鏡の中の私は清楚系美少女。スカート丈は膝にかかる程度で、シャツの第一ボタンもしっかり留めている。黒色ハイカット丈の靴下にローファー。ゆるく巻いた黒髪ロング。顔だって悪くない。間違いなく校則の範囲内の美少女。


 よし、いける。そう確信した美少女こと山本美穂は、教室へ向かった。

 私の席は窓側の一番後ろ。石田君はいつの間にか席についており、その隣の席に私は座った。


 どこか心配そうな麻衣へ、頷いて見せる。いくぞ!3・2・1…


「おはよ、石田君。」

「あ、おはよう。山本さん。」


 …沈黙。それはそう。たいして話すこともない。

 最初の一歩は非常に小さく、あっさりとしたものだった。だが、私にとっては非常に大きな一歩である。


 今日は朝から熱すぎる。

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初恋はクラスの陰キャじゃないから! mamoo @mamoo6

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