禁忌の遊びがしたくなる教室
1.禁忌の遊びがしたくなる教室
キーンコーンカーンコーン。
お昼休みのチャイムが鳴り響く。給食と清掃を終えると、紅白帽子を被った児童たちがわらわらと校庭に走り出す。
「
そんな中、四年二組教室内に甘ったるく幼い声が響く。それに続き他の女子たちも声を上げて騒ぎ始める。教室の後ろでは何人かの児童たちが一人の男子児童を取り巻いて会話が盛り上がっていた。
「うんうん! 相手チームの人たちを一気に抜いてシュート決める所凄かった!」
「ねぇ、今度練習見に行ってもいい?!」
わらわらと児童たちが捲し立てる中、話題の中心でもある
「うん、良かったら来てよ。みんな来てくれたら、俺も嬉しいかな」
そう言って狛智は笑顔になる。歯に噛むようにして笑うそこから小さな八重歯が見えた。あまりの綺麗な笑みに周りの女子から更なる黄色い声が上がる。その集団から少し離れた席では別の女子たちが楽しくおしゃべりをしている。
「狛智くんって凄いよね〜。勉強も運動も出来て、更に凄くかっこいいし」
「性格も凄く良いし、まさに理想の王子様みたーい」
その女子たちのグループから少し離れた席、彼ら彼女らの会話の様子を無言のまま一人眺める少女がいた。
「……」
彼女の名前は
花子は自分の席からぼんやりとその光景を見つめたまま微動だにしない。
「全く、あの子たちには遠慮というものがないのかしらね」
深いため息と共に花子の向かい側から声が聞こえる。花子が振り返ると、彼女の机で分厚い本をペラペラ捲るもう一人の女子がいた。よく見ると彼女の胸元に小さな名札に
花子の目の前にいるラムネは何かをブツクサと呟きながら後ろにいる集団を睨みつけていた。
「何が、"今度見に行っていい?!"よ。ありがた迷惑とか考えたことないのかなー」
「ありがた迷惑?」
「余計なことって意味よ」
首を傾げる花子にラムネは教える。ラムネは所謂物知りな人であり、花子に難しい言葉を交えながら投げ掛ける。勉学に無頓着な花子は、ラムネの言っている意味が分からず惚ける仕草を見せることが多々ある。
「十文字さん」
「んー?」
「でも、あの人嬉しそうだよ」
「あの人って……狛智くん?」
「うん」
コクリと頷くと、ラムネは溜息を深く落とした。呆れる彼女の心情に花子は更に理解が出来なかった。
「あんなのうわべだけに決まってるでしょ?」
「うわべ?」
「そう、うわべ。みんなにはああやって笑顔を振り撒いてるけれど本心は違うかもしれないし。本音と建前ってやつよ」
「本音と……建前……」
あまり聞き慣れない単語に花子は詰まる。僅かに視線を斜めにずらし考える仕草を見せる。しかし、何も思い浮かばず固まってしまう。ラムネはそんな花子を他所に本を読み続けた。
「十文字さん」
「な〜に? 花子ちゃん。てか下の名前で呼んでよ。苗字呼びだなんて他人行儀で嫌だし」
「でも、名前知らない」
「はぁ?!」
ラムネは本を勢いよく閉じ目玉を大きく見開いた。
「私たち同じクラスになってもう五ヶ月よ?!」
「そうだっけ」
「そうだっけって花子ちゃん、あなたねぇ……」
ラムネは再度溜息を深く吐き、口を開こうとするも気まずそうな表情をして唇を窄む。
「花子ちゃんの何に対しても興味がないっていうの、少しは改善したらー? 他人はおろか、自分にも興味がないなんて……生まれて初めて見たわ。どうりでクラスで孤立していると思ったこんな感じだし……」
「びっくり? ……驚いたの?」
「そうよー。驚いたの」
「そっか」
花子はそれ以上は何も言葉を発さなかった。いつもの仏頂面に戻ってしまう。その様子にラムネは信じられないとでも言うかのような眼差しを花子に浴びせる。
ラムネを見つめる花子の赤い瞳には光が宿されているが、ぼんやりと遠くを見透かすように凝視しているようにも思える。
決して虚な目を持っている訳ではない。
ただ花子は人よりも興味や関心を持つことが少なく、それによって感情が乏しいだけなのである。
「まぁ、いいわ。こう言う会話は今に始まった訳じゃないし」
ラムネは考えることをやめた。代わりに「それよりね!」と花子に話題を投げ掛けた。
「私ね、今日は六年四組の教室に行ってみようと思うの!」
「六年生の……? 用事?」
「やぁね、違うわ。そもそも、六年生は六年三組までしかないし、特段仲がいい訳ではないし」
「じゃあ、何で?」
ラムネが行く理由が分からず質問を問う。ラムネは待ってましたと言わんばかりに口角を上げ、耳を貸してと手招きする。花子は顔を近付け、彼女の答えに耳を傾けた。
「六年四組教室はね、入ったら呪われる呪いの教室って噂されてるのよ」
次の更新予定
イカれ御曹司 切開四 獄の開かずの間収集癖 囀 @mimume
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