第79話 尊敬している人から拒絶される痛み
この人はすごい。
この人の下で働きたい。
この人の役に立ちたい。
そんな尊敬できる人に巡り合えて、その人の下で働けたことはあるだろうか。
実に幸運なことではないだろうか。
もし、働き続けられて頼りにされるようにまでなったらの話だが。
私はそんな人の下で働けた幸運に何度か浴しているが、二度役立たず扱いされて放逐されてしまったことがある。
一度目は25歳の時にアシスタントをやっていた漫画家。
二度目はついこないだまで働いていた日本語学校兼不動産会社の社長だ。
社長は中国福建省出身の華人。
一代でたたき上げた華人ビジネスマンの凄みと貫禄のある人だ。
ビジネスとはどうあるべきかを初めて私に教えてくれた人で、いずれは正社員になってこの人の下で学びたいと思っていた。
でも、前回の漫画家の先生の時と同様に言われた指示を理解できなかったり、不器用すぎて簡単な作業でも時間がかかったりして、叱責を受けることが重なり全く役に立てなかった。
このパターンはヤバいと私も感じたものだ。
過去に何度か経験しているもの。
そしてやっぱり働き始めてから二か月後、「君は私の会社に利益をもたらしてくれそうにない」と言われ試用期間で解雇されてしまった。
当初は毎日叱責されてつらくなっていたから、辞めてくれと言われた時はホッとしたもんだ。
でも後から慚愧の念が果てしなく湧いてくる。
この人の所でずっと働こうと思っていた人、尊敬している人に「お前なんかいらない」と言われる気分は経験のない人でもある程度想像できるだろう。
こんな奴の下やこんなとこで働きたくない、辞めてやると思ってた所から追い出されるのとは違うことくらい分かるであろう。
私は人生でそれを二度も経験してしまった。
見返してやろう、と一回目の時は思った。
でも見返すどころか私はずっと底辺をはいずって今まで生きている。
そしてまた今度も尊敬できる人の下から追い出された。
もう尊敬できる人に会ってその人の下で働いて自分も成長させてもらいたいなんて思えない。
追い出したのが間違いだったと思わせようなんて、自分にはできないことはもう充分分かった。
もう、ただそこに置いてくれて、働かせてくれたらそれでよい。
今働かせてくれてるトコは…。
無理だろな。
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