第49話 男湯に入って来たオバハン
結構前の話なんだが、おばちゃんに私の一物を見られた。
誓って言うが、見せたんじゃない、見られたんだ。
それは珍しく銭湯へ行った時のこと。
当然ながら私は男湯に入り更衣室で衣類を全部脱いでメガネも外し、いざ浴室へ入ろうとした時だった。
ド近眼のために全画面がおぼろげな私の視覚が私の前に立つ、着衣の人物の姿をとらえた。
ボヤっとしか見えない私だが、それは姿形からまごうことなきおばちゃん。
本来男湯にいてはいけない属性の人物だ。
最初銭湯の関係者かと思ったが、なんかタオルとか持ってるし、それっぽくない。
なんかぽかんとして立ち尽くしているように見えた。
そしてそのおばちゃんなんだが、その顔は明らかに隠そうともせず一物をさらしている私を見ている。
その間10秒余り。
「いやあああああああ~」
いきなりそのおばちゃんは黄土色の悲鳴を上げて、そそくさと男湯から退散した。
何のことはない、女湯と間違えて入ってきていたのだ。
ここの銭湯は男湯と女湯が紛らわしく、私も当初女湯に入りかけて店員に阻止されたことがある。
しかし、そのおばちゃんは店員の監視網をかいくぐって男湯に入り込み、私の一物を見てしまったのだ。
私は見られてしまった。
日頃のちょっとしたことでも気にしやすい私なんだが、不思議とみられたことは気にしない。
銭湯でも股間は隠さない主義だし。
ただ、私が気になったのは何か損した気分になったってことだ。
おばちゃんだっておっさんである私のモノなど見たくはなかったであろうし、私の方もおばちゃんのを見たくはない。
しかしおばちゃんは私の一物を見たが、私の方は見れていないことが問題なのである。
全裸対着衣なので、こちらは完封された。
1対0か2対0くらいで負けた気がする。
『チロルチョコ』か『うまい棒』くらいの値段の商品を万引きされたコンビニ経営者の気分に近い。
もっとも、引き分けか勝っていたら、私の方は今頃前科が一つか二つついていただろうが。
この場合、負けてよかったのだろう。
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