第40話 我が中二病時代 2~人類防衛の大義に燃えた思春期~
自宅での自主戦闘訓練を封じられた私だが、やはり独自にやるのではなく、ある程度専門的な機関に所属する必要を感じるようになった。
すなわち自衛隊だ。
ちょうど中学三年生で将来の進路をある程度目星をつけるべき時期に差し掛かっていた私は、とりあえず中学卒業後は一旦普通科高校に行くこととして、高校卒業後には自衛隊に入隊することを学校での三者面談で宣言。
志望動機を聞かれたが、理由はもちろん「異星人と戦うため」だ。
「自分の将来なんだから真面目に考えろ」と両親も担任教師も激怒したが、人類防衛の大義に燃える私の信念はいささかも揺るがなかった。
将来自衛隊に入隊することを決めていた私だったが、一方で今のままの自衛隊では、異星人にまともに立ち向かえないとも感じていた。
円盤を真っ先に迎撃するのは戦闘機だが、その自衛隊の戦闘機F-15Jは、やすやすマッハ10を超す速度で飛ぶ円盤の敵ではない。
海上自衛隊や陸上自衛隊はモノの役には立たないであろう。
ムダ死には御免だ。
だいたい憲法で縛られた自衛隊では、ソ連軍(当時はまだ健在)や中国軍相手でも持たない。
そこで私は他力本願とはいえ、地球上で最強最大の軍事力を誇る米軍に思いをはせるようになった。
だいたい、映画でも異星人の侵略など地球規模の未曽有の脅威に真っ先に立ち向かうのは米軍と相場が決まっている。また、現実にも、そうなるであろう。
矢追純一のUFO特番でもやっていたが、米国は異星人と密約を結ぶ一方で、万が一の対決に備えて円盤を宇宙空間で迎撃するための『スターウォーズ計画』を策定するなど、日本政府が及びもつかないようなことをやってのける国なのだ。
米国なら、何か考えてくれているに違いない。
そしてその頃、ずっとベールに包まれていた米国の最新兵器がプレスリリースされた。
ステルス戦闘機F-117ナイトホークである。
それは後に、実は攻撃機であったことがわかるのだが、私はその従来の軍用機とは一線を画するF-117の未来的な形状を一目見て、対異星人戦用の兵器だと確信した。
これの主武器はきっとレーザーガンで、宇宙空間だって飛べるはず。
速度マッハ5くらい出してもおかしくはなさそうだし、最低でも空中静止は堅いと。
だが私の期待むなしく、F-117はレーザーガンどころか爆弾しか積んでおらず、宇宙空間は飛べないし空中静止もムリ、速度だってマッハ1すら出せやしない。
円盤との空中戦どころか、既存の戦闘機とドッグファイトしたら返り討ちに遭ってしまうことが分かった。
取り柄はレーダーに映らないことで、それは爆撃される側にとって相当ヤバいことなのだが、その時にはそんなことに思いもよらず大いに失望した。
画期的な兵器であることは私が高校一年生の時に起こった湾岸戦争で証明されたが、迎撃を受けることなく爆弾を落とすだけでは、異星人の相手になりそうもない。
人類は終わりだ、と絶望した。
そんな私だったが歳を重ねていくうちに、私の中で中二病たる異星人への恐怖は徐々に消え、地球防衛の大義のために自衛隊へ入隊するという情熱もどこかへ失せていった。
同時に、あの時の自分は何と無意味で恥ずかしいことに時間と労力を費やしてしていたのか、という常識的な反省ができるようには一応なれた。
だが成人して、久しい現在でもその後遺症は残っているようである。
画期的な新兵器が開発されて出現するたびに、それは地球上の軍隊や武装勢力ではなく、異星人相手にどこまで通用するかということをこの年齢になってもついつい考えるからだ。
軍事技術に限っては、私の目線は地球上だけではなく地球外にも向いてしまっている。
私の中二病は完治していないどころか持病ですらあるようだ。
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