第31話 むやみに警戒される不愉快
世の人々の目から見て私は風体の怪しい男であるようだ。
あんまり関わりたくないという態度を露骨に示されたことだってある。
そして自慢では決してないが、2000年12月30日深夜に世田谷区上祖師谷で起きた世田谷一家殺害事件の捜査において任意で事情聴取を受け、指紋をとられた経験を持つ。
職質を受けたことだって何度かある。
治安を守る警察官から見て、私は場所と時間によっては黙って見過ごせない存在らしい。
そんなに危険な男ではないはずだから、ヤカラ系ではなく変質者系の不審人物に分類されているとみられる。
それと警官以上に私を警戒してくるのは女だ。
「あんたに関するすべてに興味ないから何もしないよ」ってのにまで警戒される。
男なら経験したことある人も少なくないと信じたいが、例えば夜中に道を歩いている時、前方を歩いていた女がこちらを少々振り返るや心なしか早足になってみるみる距離を離していくという経験をしたことはないだろうか?
後から来るのが男だと確認するや、無用な脅威を感じて離脱しているのは明らかである。
あまり愉快なことではないだろう。
露骨に早足になって離脱を図られたら「お前は私の何を警戒しているのだ」と思うばかりか、カチンとくる場合がある。
ちょっとムキになったから嫌がらせとばかりにこっちも早足になると向こうはより加速し、ついには駆け足になって離脱モードから一気に逃走モードに移る。
だからと言ってこっちも駆け足で対抗してはいけない。
私は対抗した結果を知っている。
全速力で走ったその女はすっ転び、それから何と防犯ブザーを鳴らしやがったのだ。
夜中の住宅地に響く耳障りなブザー音に、今度はこっちが全力で逃走する羽目になった。
防犯グッズの中でも防犯ブザーほど無意味なものはないと思っていたが、実際に鳴らされるとかなりビビらされる。
近所だったおかげで私はしばらくビクビクしながらの外出を強いられた。
自分の大人げなさが招いた災難だったことは認めるが。
誰にも存在していることを認識されない「空気みたいな存在」も考えものだが、「警戒される存在」は本当に嫌だ。
「空気みたいな存在」は一応存在することが黙認されているけど、「警戒される存在」は存在することが許されない排除すべき対象になるのだから。
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