第29話 私ほど滑稽な男はめったにいない

自分で自分をさまざまな角度から俯瞰してみるが、いつも途中でやめてしまう。

どっからどう見ても愚か者で尊敬できるところがほとんどない。


49歳のくせにロクな職歴もキャリアもなく、現在無職。

当然金もないから住んでいるのは六畳一間のアパート、しかも整理整頓しないから部屋の中はぐちゃぐちゃ。

独身どころか彼女がいたことすらなく、風俗店以外での性交渉をしたことがないおかげで異常な性癖を持っている。

ファッションにも無頓着、というかファッションって何?という感じで、最低限の身だしなみすらしない。

低能、無能、不注意、不器用、無神経、不精、悪趣味、貧乏…。


近くにこんな奴がいたら絶対笑いものにする。

ここまで完璧にかっこ悪いダメな奴はなかなかいないだろう。

そのくせかなりの見栄っ張りなんだからとんだお笑い草だ。


さも物知りで経験豊富そうなふりをするし、ついさっき知ったことを常識だろうとばかりに披露する。

でも実はよく分かっていなかったり、間違って解釈していることが多いからすぐにぼろが出る。


ものすごくかっこ悪いのに、隙あらばかっこうをつけようとするええかっこしいだが、見え見えなのに気づいていないところがまた笑える。


若い頃は賢そうに見えたが、ダメ人間歴が長いのでもう立派な年季の入ったダメ人間相。

実物を見ればしゃべらせる前に一発で無能と気づくだろうし、その前に履歴書に貼られた写真を見ただけで書類選考の時点で断固阻止すべき応募者であることが明確になるだろう。


ここまでこうなってはならないという悪い見本はなかなかないであろう。

もっとも、ここまでになる方が逆に至難の業ですらある。


私本人ですら「よく生きてられるな」と思う。

自分を見つめるたびに深みにはまる。

未来に向けて前進しようにも、もう残された未来はほとんどないことくらいわかる。


でも、ここまで利用価値がないにもかかわらずまだ死んでいないのはなぜだ?

神の意志とやらか?何のために生かされているんだ?


ああ、そうか。

「世の中にはこんな馬鹿もいる、面白いだろ?」と世の人々を楽しませるためにいるんだな。


そりゃ納得。

私を見れば面白いに決まってるもの。

私自身は面白くないがね。

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