第28話 怨師
皆さんにとって
恩師ではない、怨師だ。
恩師とは若輩者だった頃の自分を教え諭し導いてくれて、生涯にわたりその恩と尊敬の念を感じるべき教育者のことだが、怨師はその逆。
教育と称して八つ当たりとしか思えない叱責や体罰を加えてきたり、皆の前で恥をかかせたりして、生涯にわたりその恨みが忘れられない教育者のことである。
私にも怨師がいる。
それは中学校三年生の時のクラス担任・矢田谷だ。
矢田谷は体育教師で、一年生の時から体育の授業はこいつだったのだが、こんなのがクラス担任だったら嫌だなとずっと思っていた。
矢田谷は運動神経の鈍い生徒を人間扱いしない傾向があり、まさしく運動能力が低い私を授業中ずっと目の敵にしてきたからだ。
無意味に大声で怒鳴られたことが何度もあるし、授業ではいろいろな競技をやったのだが、私を悪い見本として何度も他の者にわざわざ紹介しやがった。
最悪なことにそんな奴が中学最後の学年でクラス担任になってしまったのだ。
ADHDを言い訳にしてはいけないが、私は他人の指図をよく理解できなかったり、注意力散漫で忘れ物をしたり、大切なことを忘れたりすることが多かったためか、それも矢田谷の鼻についたらしい。
三年になって怒鳴られる回数はさらに増えた。
しかもみんなの前でだし、なぜ忘れ物をした理由をわざわざ前に立たせて発表させるのだ。
そんなことして何の意味があるんだ?
それに普段から明らかにバカにした態度を隠そうともしなかった。
三者面談ではうちの母親に私の悪いところしか言わず、「こんな情けない思いをしたのは母ちゃん初めてだ!」と母親は私を叱責したが、母親も母親で矢田谷という男はヒトの悪口しか言わん奴だということがなぜ見抜けなかったのか。
そりゃ確かに私は忘れ物をしたり話を聞いていなかったりで、教師の立場からしたらカンに障る生徒であったことだろう。
だからと言って教師がやっていいことと悪いことがあるはずだ。
矢田谷はあろうことか生徒を笑いものにする教師だったのだから。
教師だって人間だと言うが、そもそも野郎は人間として間違っていた。
矢田谷は訴えられてもおかしくないことを私にしたのだ。
我が中学校ではクラス対抗の秋の合唱コンクールというバカげたものがあり、その合唱コンクールの練習の時にそれは起こった。
矢田谷はクラス担任なのでその練習を指導。
陰険な体育会系野郎はクラス全員に「歌う時はケツの穴締めろ」と吠えていたが、女子生徒もいるんだぞ?彼女らにもそれを言ってるってことだぞ?セクハラだろう?
そしてそのセクハラが私に直撃するとは思わなかった。
いったん歌い終わった後でのことだ。
矢田谷は私に「お前ケツの穴締めて歌ってないだろ」と言ってきて、「もう一度歌ってみろ」と私に歌わせながら指をズボン越しにではあるが私の肛門に突き立ててきやがった!
しかも「オイ!締めてないじゃないか!」と言ってぐいぐい突き立ててくる。
これは何のプレイだ?
自分がどれだけ気持ちの悪いことしてるか分かるか?
中学教師が中学生の生徒にやっていいことか、これは?
しかもまたクラスの人間の前でだぞ!
私はその時中学三年生で14歳の少年だったんだ。
そんな多感な人間にこんなことやるって、どういうことか分かるか?
「そういうつもりじゃなかった」と言うのなら、どういうつもりだったんだ?
この日のことは親にも話せなかったんだぞ!
しかもその後日、私は「肛門を指で突かれて感じていた」というあらぬ噂を立てられて、卒業するまでホモ呼ばわりされるようになったんだからな!
矢田谷のことは今も許せない。
奴がクラス担任だった一年は社会に出てパワハラが横行するブラック企業で働いた一年に匹敵する。
私の中では小中高合わせてぶっちぎりかつ不動のワーストティーチャーなのだ。
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