第25話 女に生まれなくてよかった

男に生まれてよかったとは特に思わないが、女に生まれなくてよかったとは思っている。

なぜなら私のような者が女に生まれていたらよりみじめで、何よりずっとびくびくしながら生きていたであろうからだ。

別に女性を差別しているわけではない。

あくまで私ならそうなっていたであろうという推測である。


女として生まれた場合であっても、不器用で物覚えが悪く何をやらせてもダメな点では変わらなかっただろうし、他人とのコミニュケーション能力も低くて同性にもロクな友達がおらず、ファッションや化粧も下手だったはずで男には異性と認識されず、決してちやほやされなかったであろう。


まともな仕事ができなかっただろうし、家事洗濯も苦手、男にも女にも相手にされない孤独な生活。

なんか「孤独な男」より「孤独な女」の方により悲壮感が漂う気がするのは私だけだろうか?


そしてそれをみじめに感じる気持ちはより大きかったであろう。


一般的に感受性や感情の豊かさの面において男より女の方が優れている、というか上回っているようだ。

即ち、同じ事象でも女の方が感じるものが大きく豊かであるということであり、傷ついたり悲しんだり、腹が立ったりするのも男以上に程度が深刻だということではないだろうか?

つまり男であるより女である方がみじめさや苦悩が深くなる。

生きにくいことこの上ないではないか。


また、男である現実の私ならば気にしなかったであろうことでも、女だった場合の私なら大いに気になることだって多かっただろう。

女なら一番気になる容姿に関しては魅力的ではないに決まっているから、自分が男を引き付ける魅力がないという現実に傷つき打ちのめされ続けていたであろう。

男が女に異性として認識されないよりも、女が男に異性として認識されないことの方が悲劇的だと思うのは偏見だろうか?


何より深刻なのは身の安全だ。

私が女だったならば、男が怖くて怖くて仕方がなかったはずだ。

考えてもみよ、男は女を素手で殺せるのだぞ。

これは恐ろしい優位だと思わないか?

男に相手にされないから男がどんなものか分からず、その気になったらこっちを襲ってやりたい放題できる恐ろしい存在と認識していたと思う。

こっちの体が目的じゃなかったとしても金とかには大いに興味があるはずだし、攻撃されたらひとたまりもない。

極端かつ余計にモノを考える傾向のある私が女だったらまずそう考えただろう。


男であるよりも世の中に怖いものが倍ほど多かったはずで、現実の私以上にビクビクしながら生きていたのは間違いない。

だからひとまず生まれついた性が男であったことだけは良かったと私は信ずるのだ。



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