第22話 嫌なことの忘れ方
嫌なことがあったらいつまでも覚えている方だ。
「気にするな」とか「忘れろ」とか言われたって無理なのである。
時間が経てばさすがの私も忘れるが、その半減期は多分平均より長く、私の頭の中で気にならなくなるくらい減衰するまでムシャクシャしっぱなしである。
では私は記憶力が非常にいいのかというとそうでもなく、大切なことはすぐ忘れてしまうんだから我ながら自殺したくなるほど自分に腹が立つ。
ではどうすれば忘れてはならない大切なことのように、嫌なことを忘れることができるのか?
まず、大切なことを忘れる時のメカニズム、どういうことが原因で忘れてしまうのか考えてみよう。
それは私の場合、他の同じくらい大切なことにかかりきりになった時に起こる。
例えば午前11時に顧客Aに電話しなきゃならないが、その時伝票処理をやっていた。
そこへ顧客Bからクレームのメール。
なおかつ上司から今日の会議の資料はどうなっている?と聞かれたケースを考えてみよう。
私ならば顧客Aに電話しなければならないことを忘れてしまうことが多いし、会議の資料をプリントアウトして上司に見せる間に顧客Bへの返信も忘れているし、そのうち伝票処理も中断して、まだ終わらないのかと依頼してきた先から督促が来る。
マルチタスクが不可能な私ならではの事態だが、これを嫌なことを忘れるのに応用できないか?
つまり嫌なことを忘れてしまうくらい仕事に打ち込むか、趣味に没頭するとかと普通なら思うだろう。
だが、これは簡単ではない。
嫌な記憶というのは特殊な成分でできているものらしく、他のやらなきゃならないことや覚えなきゃならないことをどれだけ頭に詰め込んでも溶解しないことが多いのだ。
ならばどうするか?
簡単だ。
新しく他の嫌なことに遭えばよい。
前の古い嫌なことなど忘れてしまう。
また新しい嫌なことに遭ってグズグズ思い悩むことにはなるが、少なくとも前の嫌なことも同じように引きずって二倍悩むことにはならないのではないか。
嫌な記憶は嫌な記憶でしか消せない。
残念ながらこれ以外の方法を私は知らないのだ。
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