第17話 仕事に厳しい人間とは、胸を張ってパワハラしてくる奴だ
社会に出て、最初に勤めた会社を三年続けられなかった者はその後の人生に陰を落としやすいと思う。
あくまで私の身の回りでのことなんだが、三年続けられなかった者は四十代になってもまともな所で働けなかったり、転職を繰り返していたりすることが多い気がする。
なんか会うたびに仕事が変わっていたり、非正規雇用のままだったりで、普通の会社に正社員として十何年も務めている人間がほとんどいないのだ。
石の上にも三年というが、あれは本当だと思う。
ちなみに私も三年もたなかった人間である。
私が学校を卒業して最初に入った会社は印刷会社で、配属された部署では版下作成を担当していた。
そして、その部署というか会社全体の雰囲気がそうだったんだが、今から考えても社会人として尊敬できる人間がほとんどいなかったと思う。
というかクソばかりだった。
特にひどかったのは大竹由三というブタ野郎だ。
大竹は上司というか私の教育担当だった奴で当時34歳、会社に入って十年目だったからベテランの部類に入っていたが、こいつのことは20年以上たった今でもムカつく。
こいつの何がムカつくって、まずこいつは「オレは仕事に厳しい人間だ」と公言して胸を張ってパワハラをしてきた点だ。
また私に仕事を教えるのをめんどくさがり、口ぐせは「仕事は目で覚えろ」「一を聞いて、十を知れ」「言葉ではなく感覚で悟れ」。
明らかにテレパシー能力の習得を強制していた。
また、ロクに指導もしないのにミスをするとヤバそうな仕事をいきなり新人の私にふってくるんだから信じられない。
それなのにクレームが発生するようなミスをやらかすと、自分は一切責任を取らないばかりか、当然のように私のせいにして怒鳴り散らしてきた。
そんな言い訳はさらに上の上司には普通通用はしないんだが、大竹は「ちゃんと教えたのにやってくれなかった」と言い張り、その上司である小島茂という課長も全く疑うことなく私の責任にしてしまうんだから驚きである。
今でも、この小島という野郎はあの印刷会社において大竹の次に許せない奴だ。
私は学生だった時分、大人のずるさはもっとスマートでクレバーなものだと思っていたが、大竹や小島のずるさは小学生レベルのあからさまなものだと感じた。
大竹らばかりか、社内全体のあちこちでそんな奴が目についた記憶がある。
私はそこを一年と一か月くらいで辞職させられたんだが、その原因は大竹がクレームをしょっちゅう出す大口の仕事を私にやらせ、その大口がクレームを出した結果、取引が切られて会社が少なからぬ損害を出したからだった。
あろうことかその責任を大竹と小島は私にとらせたのである。
その後色々転職し、その印刷会社より長く勤めた会社も多いが、大竹や小島ほど無責任でクソだった奴はあんまりいないから、会社というものはあそこまでひどいもんじゃないことが多いのではないか。
だが、私は社会人一年目でそんな目に遭ってしまったからそれから就職するのが怖くなってしまった。
初体験というものはその後に大きく響くものらしく、それ以降の人生で社会人一年目で会社を辞めたりした者何人かと知りあったが、彼らのうちその後の人生が大きく狂ったとしか思えない者は実に多い。
就職ガチャか配属ガチャでハズレというのもあるかもしれないが、やはり最低三年勤めていればその後は大きく違っていたのかもしれない。
私の場合は解雇だったからちょっと違うが。
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