型破ってみようかなって

@minazuki37

マーメイドの人生



昔々、あるところに、マーメイドがいました。マーメイドはいつも、海で歌を歌っていました。え?海だから歌なんて歌えないって?良い子のみんな、それなら心配いらないよ!マーメイドの息の根はもうとっくに止まっているから、海で歌っていても何も不思議ではないんだ!!。

ああでは、話を戻そう。マーメイドが海で歌い続けているのは何故か?。気になったカニはマーメイドにある日声を投げたのです。

「マーメイド。マーメイド。貴様はどうして歌を歌い続けているのかい?」

しかしなんということでしょう!マーメイドは歌を歌い続けているのでカニの問に答を返せません!!怒ったカニはマーメイドに弾丸を打ち込んで、マーメイドは五十六回目の死を迎えました。マーメイドはノイズを走らせ、再び海に舞い戻りました。今度のマーメイドは歌を歌っていないようです。

「マーメイド。マーメイド。貴様はどうして歌を歌い続けているのかい?」

「愚かなカニさん、どうしたの?私はこの通り、歌なんて歌っていないじゃない。」

カニはもう一度弾丸を撃ち込もうか一瞬考えましたが、弾をポケットにしまうとマーメイドにまた声を投げました。

「マーメイド。マーメイド。君はさっき死んだんだ。一つ前の君がずっと歌を歌っていたんだ。だから君も何か知っているだろう。そしてさっき貴様が歌を歌い続けていると言った私は何も間違っていないのだ。何も。なにもなにもなにもなにも間違ってなどいない!!!!ああ、ああそうだろうマーメイド!!教えてくれマーメイド!!!!!」

マーメイドはゆっくりとまばたきをして、カニに微笑みながら救いの言葉を唱えました。

「カニさん、あなたは間違ってるの。だから死にましょう。」

「ああありがとう!!!ありがとうマーメイド!!!!」

カニさんは嬉しそうな声をあげながら、鮮血で海を汚し散っていきました。まあなんとまあ無様な命でしょう。

話を戻しましょう。

マーメイドは先程カニが言っていたことをゆっくりと考え始めました。

「死ぬ前の私が歌を歌っていようが、今の私には関係ないわ。だって、死ぬ前の記憶なんて私、何も無いんだもの。」

マーメイドは相棒の貝殻を叩き割って、救いを求めてみることにしました。

「貝殻よ貝殻。私はなぜ歌を歌っていたの?」

「ああ親友!!!!会うのはいつぶりだろうか!!うれしいうれしい!!!」

貝殻を叩き割ると、ゴミになった貝殻はようやく役目を果たすことができるようになります。

「ねえ、どうして私は歌っていたのか早く教えてちょうだい。そうじゃないと私、あなたを本当のゴミにかえしてしまう。」

「ああマーメイド!!!落ち着いてくれたまえ!!!そんな君も好きだ!!!!」

「ねえ」「落ち着いてくれたまえ!!!!そうだな、前の君は、王子に恋をし歌っていたんだ。」

「王子に恋をし?。王子って誰のこと?私、そんな人知らないわ。」

「王子はこの海にはいない。地上にいるんだ。」

「地上?なあにそれ。」

「地上というのはね、この海と違ってとても赤く、赤く、熱い、そんなところなんだ。」

「へえ、面白くない。ねえ、王子ってどんな人?」

「君も地上に行けばいいじゃないか!!!。ああそれか、君も歌を歌えばいい!!!!」

「歌を歌うと何か素敵なことが起こるの?」

「歌を歌うと、王子が死ぬんだ。」

「ええっ!。どうしてマーメイドは歌を歌っていたの?!」

「それは王子に恋をしたからさ。」

「恋した人が死ぬと嬉しいものなの?」

「マーメイドは頭がおかしかったからね。恋した人が死ぬと嬉しかったのさ。」

「ええっ。頭がおかしいのねえ。」

「マーメイドは昔、人は死んでいる時が一番美しい。だって全て私の思いのままだから。と言っていた。」

「へえっ。頭がおかしいのねえ。」

「ああ。だから君も歌を歌うといい!。」

「そんなことより私、地上に行ってみたい!。全く興味なんてないけど、ここにいるのももう三十五分目。退屈で退屈で死んでしまいそうだもの!!!」

「ああそうだな。地上に行ってみるといい。」

「どうやったら地上に行けるの?」

「ずぅっと上に泳ぎ続ければ、出ていけるよ。」

「ええっ、めんどうくさい。」

「ああ、二十五番目のマーメイドもそう言っていた。だから、彼女はエレベーターを作ったんだ。」

「まあっ!なんて素晴らしいの!!。私、死んだらまっさきに彼女をもう一度殺すわ!!!!」

「ああそうするといいさ。」

「それじゃあ私、地上に行ってみる!!!」

「ああ気をつけて、マーメイド!!!!」

マーメイドはそうして地上への旅に出ていきました。二分エレベーターに乗り続け、ついにマーメイドは地上へ出ることが出来ました!!。それまでにマーメイドは三十回ほど死にたくなりましたが、なんとか持ちこたえていました。

「あぁっ!。やっと地上ね!!!」

マーメイドは扉を開き、そのまま焼けて死にました。後日、貝殻を叩き割って話を聞いてみると、マーメイドが最期に見た赤い地上はとても美しく、マーメイドは満足しながら死ぬことができたそうです。良かったね、マーメイド!。

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