第11話 決意の瞳
アル達がフィリップに呼ばれ、屋敷を出た後、ルナとレイナは一緒に部屋で待機していた。
「あの、ルナ……」
「なぁに?」
レイナが少しためらいながらルナに聞いた。
「貴女は、その……クリス様……オスカー様を、恋愛的に好きなのでしょうか……?」
「?…………はあっ!?」
一瞬の間をおいて事を理解したルナが目を見開く。
「いやいや私、まず人を恋愛対象として好きになったこと、無い無い!」
「え、そうなのですか?」
コクコクと頷くルナ。
「友達としてとか、家族としてなら当然好きだけど、恋愛って考えたこともないよ?」
「……そう、ですか」
レイナが、ホッとした表情になった。
その顔で、「そういうことか」とルナがニヤリと笑う。
「つまり、レイナはオスカーのこと、好きなんだね」
「っ!?」
(この反応……やっぱりね)
林檎より赤くなったレイナの頬。
「言っちゃえばいいのに、せっかく久々に会えたんでしょう?」
「簡単なことではないんですよ……。断られたときの事を考えると、余計にできなくなります……」
「私は、言いたいことは言いたい時に言うタイプ! 今すぐに伝えたいって思うなら、すぐに言うといいよ」
一瞬、ルナが目をそらして小さな声でなにかつぶやく。
「――一回チャンスを逃すと、一生言えなくなるしね……」
いつも元気なルナがどこか、悲しげな瞳をしている。
『ル…………ナ』
「?」
「ルナ、どうしたのですか?」
誰かの、声がした。
『……ルナ!』
「――アルっ!?」
聞こえたのは、凄く苦しそうなアルの声だった。
『たすけ……っ!』
「アル!」
パシッとレイナの手を掴んで、呪文を口走った。
「風よ、どこまでも吹き抜ける風よ、光の大地へと我らを運べ!」
* *
次の瞬間、首を絞められているアルが目に飛び込んだ。
「アル――っ!」
助けなきゃ、助けなきゃ!
「「ルナ!?」」
「風よ! 空気を切り裂く風よ、悪しき物を断ち切る力を!」
ザンッ!
「っ!」
フィリップはパッとアルの首から手を離し、後ろへと下がった。
(……!? 今のは――?)
アルが咳き込む。
「ケホッ……っ!」
「アル! 大丈夫!?」
「ル、ナ。お前、目が……」
また、だ。ルナの瞳――左目が、今回は吹き抜ける風のような緑に。
だが、すぐに戻ってしまって、ルナが激しく咳き込む。ルナは咳き込みながらも、すぐにアルの近くまで行き、かばうように前に立つ。
「ルナレインさん、だめじゃないか、屋敷の外へ出ては。……このまま返すわけには行かないなぁ」
フィリップが、じりじりとルナと距離を縮める。
その時、凛とした声が辺りに響き渡った。
「風よ、我に集え! 怒りの嵐よ、雷の矢と共に、闇を断ち切れ!」
「うわぁぁぁっ!」
フィリップが突風に押され、ダンッと木に打ち付けられた。
オスカー達を襲っていたフィリップの手下も、同じく飛ばされ、ゲホゲホと咳き込んでいる。
「れ、レイナ……」
フィリップが、自分を襲った犯人――レイナを見上げる。
「……フィリップ様。私は、貴方の婚約を断るのが、とても怖かったです。好きなのに、婚約できないとなったら、とても悲しくなる……それはわかります。
……私も、そうなるのではないかと怯えているのですから」
レイナは、震える拳を握りしめて、フィリップを見る。
「ですが、自分の目的だけを果たそうとする行動は、絶対に許せません。なぜなら、その
実際、貴方は楽しかったですか? 村の人を操り、怯える私を見続けるのは、良い気分でしたか?」
不安気で、でも決意を込めた瞳で、フィリップを見据えるレイナ。
「……っ!」
「今までの私なら、ここまできっぱりと言えなかったでしょう。……ですが、ルナ達が、私に勇気を出すきっかけを作ってくれた……」
キュッとレイナが唇を噛む。
「……ごめんなさい。やっぱり、あなたのことは好きにはなれません」
暖かい日が差す空から、パラパラと雨の雫が落ちてきた。
それは、彼女の銀の髪をいっそう美しくし、彼女の瞳から流れる涙を、照らしたのだった。
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☆ここまで読んでくださってありがとうございます!♡や、やさしい感想等お聞かせ願えるとうれしいです!SANA✿☆
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