第25話「私にとって①」

私、杉浦美緒は子供の頃からモテていた。小学生の時は学年の男子のほとんどが私に好きなことを知っていた。中学の時も色目を使っていないのにも関わらずほとんどの男子が私に対して告白をしてきた。


けど正直言うと全然タイプじゃなかった。私が結構はっきりと物を言う人間だったから少し素を出しただけですぐに男子たちは萎縮してしまった。


「高校に行けばいい人いるのかなー」


「さぁ、美緒だったらそれこそ選び放題じゃないの?w」


中学時代まではあまり友達はできなかったけどその子とだけは今でも連絡を取り合ったり遊んだりしている。


中学も卒業して高校に入学した私は入学式の次の日、いきなりある男子に告白をされた。


「一目惚れしました!好きです!」


誰がどうみてもヤバいやつとの最初に交わした会話、それが陸との出会いだった。




       ーーーーーー


「ついに来たぞー!」


「「海だー!」」


私たちはついにこの日を迎えた。どこまでも広がる青空、そこに一本の水平線が引かれている。今日の波の音は比較的に落ち着いていてムード作りをしたい人にはたまらない。


「いやーやっと来れたよな。」


「だな。」


陸と透は2人で盛り上がっていた。他にも高校時代の友達何人かで海に来ていた。


「そう言えば陸は海に来るの何年ぶりだったっけ?」


「お前と来た時ぐらいだからー2年ぶりぐらいか?」


「そん時はわたしの体ばっかジロジロ見てたもんね?w」


「余計な誤解を招くようなこと言うな、周りを見てたりしてたんだよ。」


「なるほど、周りの巨乳に釣られてたのか...w」


「いやだから違うからな!?」


「え、陸くんキモーw」


「どうしていつもこんな目に。」


まずは日課である陸イジリを済ませたところでさっそく水着に着替えることにした。友達の水着もしっかりと拝めるからやっぱり海は好き。


「え!?未紗その水着って最近あの電子雑誌に載ってたやつだよね?」


「そうだよーw 私のスタイルを引き出せそうかなって思って思い切って買っちゃったw」


そう、今日この日のために買ったんだ。すべてはまたあの男を虜にするために。



そうして着替え終わった私は外に出る。男たちはやっぱり着替えは早いから外で待たせてる。


「じゃーん!w」


「「うぉー...///」」


やっぱり男はしっかりとキープしているスタイルを見せられると盛り上がるもんだと私は理解している。うんうん、しっかり膨らんできてるなw


「やっぱ美緒のスタイルはすげぇな!」


「へへ!サンキュー透! 陸はどう、今日の私似合う?」


「え、まぁ似合うよ。前見た水着より断然大人っぽいな///」


キター!手応えありっと内心ではものすごく気持ちが盛り上がっている。陸を観察すると耳や頬が少し赤いから本当に照れてるのがわかる。


「お、陸にしては上手に褒められたね?w大変よくできましたーw」


「うるせぇなおれをガキ扱いすんなっての!///」


「いやいや、あんたは間違いなくガキよw」


周りの友達にもからかわれ陸は恥ずかしがり、私たちはゲラゲラと高笑いしていた。


「ささ、まず何しよっか?」


「そりゃまずは海来たんなら入んなきゃだろ!」


膨らませながら言うとなんかいやらしく聞こえるのは私だけなのだろうか。なんて思ったけど私も最初は冷たい海水と戯れたいw


さっそく私たちはまずは浅瀬まで走って向かった。透は実はカナヅチで泳げないから透に陣地の確保、スイカの用意、肉の補充を任せていくことに。


「ほら!陸も行くよ!w」


「いや、ちょっおま...!?」


言いかけた陸の手を握り、私は思いっきり走っていった。陸は最後の方に浜辺ですっ転んだから思いっきりみんなで笑い倒して。


「あはっw気持ちいいー!w」


海に入って無邪気に私は喜ぶ姿を陸に見せる。そう、前に来た時と同じ笑顔を。


「だな、確かに気持ちいいな。」


「ね!んじゃ素潜りいくか!」


「なんでそうなんだよ!?」


「よーいどん!」


「クソっマジかよ!」


私と陸は少し沖の方まで泳ぎ素潜りを開始した。実はここは夏の定番の旅行スポットで有名で海は正に透き通っているって表現が合う。濁ったりしていないし、小魚とかもチラホラいる。


陸には最初断られと思っていた。海は嫌なことを思い出すからあまり行きたくないって言ってたのを私がゴリ押しで連れて来たんだよなと思い出す。


隣に陸が来た。そういえば中学の時まで水泳をやっていたと聞いていただけあってやっぱり泳ぎが上手い。足の使い方や呼吸を持続させる方法も。しばらくすると私にタッチして上を指差したから一度海面まで息継ぎにいく。



「ぷはぁー!んーいいね!綺麗な海に来れてよかったー!」


「最初は何言い出すんだと思ったけど確かに素潜りも面白ぇな!」


陸も喜んでいるなら何よりだと思う。最近になって笑顔が増えたなと実感する。やっぱり未紗ちゃんの影響なんだろうか?


いやいや、負けちゃダメでしょ。私は陸の元カノ、陸を喜ばせる術は知っているつもり。


「あ、ヤバ!」


私は上の水着の紐をわざとゆるくした。そう、むっつりな陸ならきっと。


「おいおいちゃんと結べよなたく。」


よしきた!陸は私の水着を抑えながら紐を結び直してくれる。なぜなら私の胸をあわよくば触ろうとするドスケベだからだ。


「っん///」


「あ、わりぃ。くすぐったかったか?///」


「うん...///」


まぁこうやって演技すれば、ほらほら陸もしっかりと男なんだなと実感できるんだよ。


「おおーい2人ともーご飯できたってー!」


浜辺に戻っていた友達が私たちを呼んだ。料理担当の透がご飯を作り終えたと連絡が入ったから。さてと、とりあえず第一段階は終わり。


「はーい今行くー!

ありがと陸、じゃ戻ろっか!」


「だな!」


私たちも浜辺までもどってブルブルして水気を落とす。犬のように私の髪が揺れているのを見て陸はなぜかツボにハマっていた。


「ちょっ何でツボ入ってんのよ!?」


「あはははは、だってなんかブルブルしてるときの美緒の顔まるで...ぶっくくく」


「女の子の顔にケチつけんなぁー!」


私は陸に飛び蹴りを炸裂させて髪を引っ張ってみんなの元へと戻った。ご飯を食べたら第二段階スタート。



       ーーーーーー


「美味かったー!透くん料理美味いねー!」


「いやーそれほどでもーw」


ご飯を食べ終えた私たちは次にスイカ割りをすることになった。ルールもシンプル、目隠しをしてスイカを割る。ただ罰ゲームも用意していて、夜にやる肝試しの順番で1番最後に行くってルールだ。


今日私たちは泊まりで来ている、人数は7人。そう、最後の1人は必然的に1人で回ることになる。その最後の1人を決めるゲーム。


「さてと、じゃ最初は誰からやる?」


「じゃ私から!」


まずは友達から。目隠しをして右に10回左に10回回してそこから5m先のスイカまで誘導していく。


「あっちょい左にw」


「いやいや、ちょいと右に回転w」


「ちゃんと指示してってーw」


そう言いながらも着実にスイカまで辿り着き、そしてスイカを叩く。


「やった!」


この流れを数回行い、いよいよ次は陸の番。


「さぁ陸、ドスケベの力を見せてやりなさい!w」


「さりげなくみんなの前でドスケベ言うな!///」


「いやーみんな知ってるからね?w」


そう言うとみんなは一斉にうなずく。陸はショックを受けた顔で棒立ちしている。今までよく隠し通せてると思ったなと。


「じゃ陸目隠しするよ。」


「頼む。」


そうしてさっきと同じように回した。一つだけ違うとしたら、今私がスイカの近くにいることだ。


「陸ーもうちょい左w」


「陸くんそのまままっすぐw」


一歩ずつ私の元に近づいていく陸。そしてスイカの前まで辿り着いた。


「お、なんかここにありそうだ。んじゃいくぜー!」


陸は思いっきり振りかぶる、そこを私は


「えいw」


「は?」


陸はバランスを崩し私の胸元に飛び込んで来た。


「あれ、柔らかい。もしかしてスイカ割れた感じ?」


「え!?あぁそうだな。おめでと陸w」


「陸くんおめでとw」


陸が倒れ込んでさすがにちょっと重い、陸は目隠しを外すとそこには


「やほw」


「うわぁー!?」


まぁ確かにわかるよ、私がいるんだからそりゃ驚くわな。


「どうだった?スイカの感触は?w」


「あぁ、優しく包まれたよ...


じゃねぇんだよ!危ねぇじゃねぇか!?大丈夫だったか?」


なんか心配をされるっていう思ってたのと違う反応があったから唖然としちゃった。


「え、うん///」


陸の真剣な顔に、今度は本当に照れてしまった。すかさず友達たちはヤジに入る。


「ねーwやっぱ陸くんむっつりじゃんw

これは間違いなく今大会のMVPだわw」


「だな、てなわけで肝試しはこの2人で決まりだな!残った透は肝試し1人でがんばれw」


「いや、マジで...勘弁してよ...」


透は確かおばけとかホラーとか苦手だからガクブルになる気持ちはわかります。だけど自分から罰ゲームを仕掛けたんだからそれはやってもらわないと。てかなんか足挫いたっぽい。


「いてて...」


「美緒、大丈夫か?」


「大丈夫だよ、気にしすぎw」


「足挫いたんだな。よし」


「うわぁっ!」


お姫様抱っこで私を軽々と担いだ。意外と筋肉もついてるのは知ってるけど魅せ筋なのかと思っていたから心臓がバクバクと脈を速くした。


「やっぱりそんなことされちゃったら...」


「ん?なんか言った?」


「んーん、なんでもないw」


照れちゃうだろうが!


そんなアクシデントがありながらも楽しく夕方まで海の時間を私たちは楽しんだ。

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一片の雪/それでもおれは君を... 希塔司 @abclovers0104

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