友人
不労つぴ
第三者
「久しぶりだな。つぴ」
バイト終わりの僕に突然、友人から電話がかかってきた。
「今度の土曜日に、
真司というのは僕の中学時代からの友人だ。彼は高校を卒業すると同時に東京の企業に就職した。それ以来忙しいらしく、中々地元には帰ってこない。僕も定期的に連絡を取っており、本人から今回帰ってくることは知らされていた。
「人数は多いほうがいいと思って、
陽介と雅紀も真司と同じく中学時代からの友人だった。僕は2人とも定期的に遊ぶ仲で、僕を除いた3人は幼馴染で、とても仲が良い。なので断る理由もなく、僕は2つ返事で了承した。
「じゃあ、25日の月曜日の夜にしないか?」
24日ではダメなのだろうか?
真司は確か26日の昼に帰ると聞いていた。それなら、早めに終わらせておいたほうが真司にも負担がかからないはずだ。
僕はそう思い、友人に伝える。
「24日より前はみんな用事があってダメみたいなんだよ。真司は元カノに会いに行くんだってさ」
あいつはまだ、元カノと続いていたのか……。
僕は頭を抱えた。あいつは先日、新しい彼女と付き合い始めたばかりだったはずだ。あいつには会ったときに、小言を言っておいたほうがいいかもしれない。
「陽介は東京の友達のところに遊びに行くんだってよ。案の定、ラーメン屋巡り。雅紀はバイト仲間と飲みに行くらしい。なんでもお世話になった先輩――〇〇さんだったか、その送迎会だってよ」
それなら24日は無理か。以前、陽介からはそのような話を聞いたような気がするのを今になって思い出した。僕自身は25日でいいと言う旨を友人に伝えた。
「じゃあ、他の皆には伝えておくよ。バイト終わりに悪かったな。一緒の弟さんにもよろしく。じゃっ」
そう言うと友人は電話を切った。
通話が終わった後、些細なものではあるが違和感のようなものを感じた。しかし、それが何なのか分からなかった。
その違和感は、グラスに入った氷のようにゆっくりと溶けていき、やがて同化して分からなくなった。
23日になった。友人は皆に連絡すると言っていたが、真司や陽介達からは未だに何の連絡も無かった。一体どうなっているのだろうか。そう不安に思っていると、携帯に着信が来た。真司からだ。
「もしもし」
「やっほー、つぴ。元気にしてる?」
電話越しからおちゃらけたような明るい声が聞こえる。
「明日、陽介とか雅紀とか誘って、気晴らしにパーッとドライブにでも行こうよ」
あれ? 結局25日ではなく、24日に遊ぶことになったのだろうか。しかし僕のところには一切連絡は来ていない。
「明日? 明後日の25日じゃなくて?」
僕が聞き返すと真司は不思議そうにした。
「別に明後日でもいいけど……なんか都合が悪いのか?」
「いや、真司元カノさんと遊びに行くんでしょ?」
僕がそう言うと、真司は絶句しているようだった。僕は何かマズいことを言ってしまったのだろうか。そう思いつつも、一言言っておこうと思い話を続ける。
「あんまりこういう事言いたくないけど、今の真司は付き合ってる人がいるわけだしそういうのは――」
「誰から聞いた?」
僕の言葉を遮って、真司は質問する。
「俺この話まだ誰にもしてないんだよね。まぁ、今回集まったときに話そうとは思ってたけどさ――それで、つぴちゃんは一体誰から聞いたの?」
この瞬間、妙な緊張感が2人の間に生じたのを感じた。
「誰って……友達の……あれ?」
おかしい。名前が思い出せない。でも、確かに
僕は通話の履歴を確かめる。
しかし、アイツから連絡が来た日には、着信など一件も無かった。
「ねぇ、真司。陽介や雅紀から25日に遊ぼうって連絡来なかった?」
「2人から連絡なんかきてないよ。その2人とはここ数ヶ月連絡取ってないし。そもそも、地元の連中で定期的にに連絡取ってんのつぴちゃんくらいだよ」
僕は額から冷や汗が流れ落ちるのを感じた。
「ごめん、またすぐに掛け直すから待ってて」
僕はそう言うと電話を切り、まず陽介、その後すぐに雅紀に電話をかけた。結果は2人とも同じだった。
両者ともその話を僕の身の回りの誰にも話していないそうだ。陽介はラーメン屋周りの話を、雅紀は僕がバイトを辞める先輩の名前を知っているのを驚いていた。そして二人共案の定、遊びの連絡など来ていないとのことだった。
電話を終え、僕はあることに気づき、背筋が凍りついた。
僕は自分が地元に帰り、知り合いの伝手で本屋のアルバイトをしていることを周りに言っていない。ましてや、弟と一緒に働いていることも。それを知っているのは一緒に住む母や弟くらいだ。だが、アイツはそれを知っていたようだった。
じゃあ、一体。
アレは誰だったんだ――?
友人 不労つぴ @huroutsupi666
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