第47話 キス

「アラン様……お背中をお流ししますね」

「は、はい!お願いします!」


 ルーナさんと入浴をすると、ルーナさんはいつも通りまずは僕の背中を流し始めてくれた。

 その手つきは相変わらず優しく、同時に僕の体を大事に思ってくれているのがとても伝わってきた。


「ルーナさんに背中を流していただいている時は、とても温かいものが流れ込んでくるような気持ちになります」

「この私の溢れるほどの愛が、アラン様に伝わってくださっているのでしょうか……でしたら、それはとても嬉しいことです」


 それから、ルーナさんが僕の背中を流し終えると、次に僕はルーナさんに言った。


「ルーナさん……次は、僕がルーナさんの背中を流しても良いですか?」

「っ……!はい、もちろんです」


 僕は快くそう言ってくれたルーナさんの後ろに回ると、今度は僕がルーナさんの背中を流し始めた。

 ……相変わらず、色白で滑らかな肌だけど────前とは感じ方が違う。

 前はただ綺麗だと思っていたけど……今は────僕が、この背中を……ううん、背中だけじゃなくて、ルーナさんの体も、ルーナさんのこと自身も守って、幸せにしていきたいと心から強く感じる。

 そう感じた僕は、思わずルーナさんのことを後ろから抱きしめた。


「ア……アラン様!」


 突然抱きしめられて驚いたルーナさんに、僕は伝える。


「ルーナさんに背中を流していただいてる時に僕のことを抱きしめてくれる時がありますけど、抱きしめるときはこんな感じなんですね……服も何も着ていない時に直接抱きしめるのは、やっぱりとても温かい気持ちになれます」


 僕がそう伝えると、ルーナさんは驚きを落ち着けて、優しい声音で言った。


「……そうですね、私も今、アラン様に抱きしめられて、とても温かい気持ちです」

「ルーナさん……」


 その後、その温かい時間を二人で過ごすと、僕たちはそれぞれ体を洗って一緒にお湯へ浸かった。

 すると、ルーナさんは僕の顔を正面から見てきて優しく微笑んで口を開いた。


「……アラン様、私はこうしてアラン様と共に過ごす時間がとても幸せです……アラン様がお傍に居てくださるだけで、私は幸せになれるのです」

「僕も同じ気持ちです……この広い大浴場に一人で入っていた時は少し寂しさもありましたけど、ルーナさんと一緒に入浴をするようになってからはそんなことも一切感じなくなりました」


 それから、僕とルーナさんはしばらくの間見つめ合った。

 ルーナさんは今とても頬を赤く染めているけど、それはきっと僕も同じなんだろう。

 互いに見つめあっていると、いつの間にか僕はルーナさんのことを求めるようにルーナさんの方に近づき、またルーナさんも同時に僕の方へ近づいてきていた。

 そして、互いに互いの体を抱き寄せ合うと────互いに求め合うように顔を近づける。


「……」


 ルーナさんの唇、とても艶があって、柔らかそうで……色気のようなものを感じる。

 そんなことを思っていたのも束の間、僕とルーナさんは、そのまま互いに顔を近づけ合い────唇を重ねた。

 僕とルーナさんの、初めてのキス……ルーナさんのことが、愛おしくてたまらない。

 僕はそう感じながら少しの間ルーナさんと唇を重ね合うと、ルーナさんは頬を赤く染めて甘い声で、そして色気を感じる雰囲気で言った。


「アラン様……あと少ししたら、入浴を終えてベッドの方へ移りませんか?」

「っ……!」


 ────そう提案された僕は、心臓の鼓動を今までに無いほど早めながら頷いて言った。


「はい……!」

「ありがとうございます、アラン様」


 それから、僕とルーナさんは再度互いのことを見つめ合った。


「ルーナさん……」

「アラン様……」


 そして、名前を呼び合うと……互いの体を抱き寄せ合いながら再度唇を重ね────その後、一緒にお風呂から上がると、僕の部屋のベッドの上で隣り合わせになって座った。

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