第39話 懺悔
「ざ、懺悔だと……?この私が、あんな子供に懺悔など────」
「己の立場を理解しなさい」
そう言うと、ルーナはレドロンに冷たい目を向けた────その目は、ルーナが今レドロンの命運を握っていることをレドロンに感じさせるには十分すぎるほどに冷たい目だった。
「ぐっ……わかった、アランくんのことを子供だと侮ったことを謝罪しよう」
「アランくん?アラン様、ですよね?」
「っ……!」
レドロンは下唇を噛んで、屈辱を感じている表情をした。
こうして床に体を這わせて、子供に謝罪させられたことだけでもレドロンにしてみれば許し難い屈辱。
ルーナはそんなレドロンに対して追い打ちをかけるように言う。
「どうかなされましたか?アラン様のことをアラン様と呼ぶことすらできないのですか?」
状況が状況だけに今は従うしか無いと割り切ったレドロンは言った。
「アラン……様のことを、子供だと侮ったことを謝罪しよう」
「しよう、ですか?」
「しゃ、謝罪します!アラン様のことを子供だと侮ってしまったことを、謝罪します!!」
ルーナに対する恐怖によって、プライドというものが完全に頭から消えたレドロンは床に頭をつけてそう言った。
すると、ルーナは口角を上げて言った。
「よろしいです……では、次へ参りましょうか」
そのルーナの言葉に、レドロンは顔を青ざめながら言う。
「つ……次?もう、謝罪は済んだはずでは────」
「何を言っているのですか?アラン様のお優しいお心によって行われたことを自己満足だと評したことや、そもそもアラン様のお求めになったことに一言で応えなかったこと、そしてアラン様のものである私に触れようとしたことなど────あなたはこれよりあと数分の間、懺悔し続けるのです」
その後、ルーナの宣言通り、ルーナとレドロンが二人きりになってから五分が経過するまでの間、レドロンはアランに対し懺悔をし続けた。
プライドを持ってルーナに抵抗姿勢を見せていた時間も合わせればレドロンがアランに懺悔し続けた時間は五分に満たないが────それでも、その数分間は、レドロンにとって自らのプライドを打ち砕くには十分なものだった。
◇アランside◇
ルーナさんとレドロン公爵のことを二人にしてから、四分が経過した。
ルーナさんの言っていた五分まで、あと一分……僕は、不安な気持ちでいっぱいだった。
何かあったら声を上げるように言ったけど、口を抑えられたら声を上げても聞こえない……そして、口を抑えられた状況なら、ルーナさんが何か危害を咥えられてしまうかもしれない。
護身術を会得しているとは言っていたけど、不意を突かれたりして力勝負になったら……
そんな考えが頭を離れない……もしルーナさんが傷付いてしまったら、もうあの優しい笑顔が見れないとしたら────僕は……僕は……
そんな不安を募らせながらも、ルーナさんとの約束を守るという意味でも五分が経つまで待っていた僕は────四分五十九秒から五分になった瞬間に、客室のドアを開けて中に入った。
「ルーナさん!」
「アラン様────」
僕は、ルーナさんの姿を確認すると、思わずルーナさんの方に走ってそのままルーナさんの方に走ると、ルーナさんの両肩を掴んで言った。
「ルーナさん!何もありませんでしたか?どこか怪我とか、変なことをされたりはしませんでしたか?」
僕が心配を表に出しながらルーナさんにそう聞くと、ルーナさんはそんな僕のことを見て優しく微笑みながら言った。
「はい、私は何もされていませんので、そんなにご心配なさらずとも────」
ルーナさんからその言葉を聞けた僕は、安堵感から思わずルーナさんのことを抱きしめてしまっていた。
「良かったです……ルーナさん、本当に……良かったです!」
「アラン様……」
その後、ルーナさんも僕のことを抱きしめ返してくれて、僕たちはしばらくの間互いのことを抱きしめ合い続けた。
僕はこの時、今まで以上にルーナさんの存在の……ルーナさんが傍に居てくれることの大切さを感じることができた。
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