第35話 問題点

「お、おはようございます、ルーナさん」

「おはようございます、アラン様」


 僕とルーナさんは、朝宿のベッドで目を覚ますと、互いに体を起こしてそう朝の挨拶をした。

 ……宿のベッドは、王城の僕の自室にあるベッドよりもかなり狭いため、ルーナさんとは眠るときにかなり体が密着していて、眠りに落ちるまでの間に少しだけ時間がかかってしまったけど、どうにか眠ることができてひとまず安心だ。


「アラン様、本日はどういたしましょうか?」


 僕がそんな安堵感を抱いていると、ルーナさんがそう言ったため、僕はしっかりと昨日から頭の中で考えていた今日の方針を話す。


「今日は、この国の人たちに色々と聞き込みをして、何か悩んでいることとかを聞いてみたいと思います」


 この国の問題を解決して何かしらの形で貢献するにしても、まずはこの国の問題点を探さないと貢献することは難しいから、きっとこれは間違っていないだろう。

 僕がそう発言すると、ルーナさんは明るい声で言う。


「わかりました、私も本日お供させていただきます」

「ありがとうございます!」


 ということで、お父様から頂いた他国に貢献するという命の実質初日が始まった。

 どれだけ日数がかかるかわからないけど、ルーナさんとならきっとやり遂げられるはずだ!

 そう意気込んで宿の下に降りると、宿の大家さんが僕たちに話しかけてきた。


「おう、おはようさん、昨日はよく眠れたかい?」

「はい、とってもよく眠れました」

「私もとてもよく眠れました」


 その後、これからこの国に居る間はこの宿で過ごしたいと大家さんに伝えてから、少し雑談を交えた。

 そして、僕はその雑談ついでに大家さんに聞いてみることにした。


「一つ聞きたいことがあるんですけど、この国で今何か大きな問題となっていることってありますか?」

「大きな問題……?すぐに思い当たることといやぁ……レドロン公爵だな」


 

 当然、僕はこの国のことを全く知らないため、そのレドロン公爵という人のことを聞いたこともなければ見たこともない。

 でも、大きな問題に関わっているとなれば聞き逃すわけにはいかないため、僕はその人について言及する。


「そのレドロン公爵という方は……?」

「一言で言えば独裁者だ、勝手に土地を使って建物を建てるし、食べ物の流通なんかも自分が一番儲かるように決めやがる……たかが一貴族って思うかもしんねえが、レドロン公爵の領土はかなり広くてな、この国の物資の流通の中心になってるような場所だから十分大きな問題って言えるだろ」


 確かに、かなり大きな問題だ……そのせいで商売がしにくくなっている人たちは大勢居るだろうし、商売をしにくくなっている人が大勢居るということは、それだけこの国の食べ物や日常で使う物なんかも回りが悪くなっていて、必要な人のところに届かないなんて事態にもなっているかもしれない。


「わかりました、ありがとうございます」

「こんなことでよけりゃいくらでもしてやるよ、またわかんねえことがあったら俺に聞きな」

「はい!」


 宿の大家さんからこの国の問題点を聞くことができると、僕とルーナさんは一緒に街の外に出た。

 そして、ルーナさんが言う。


「流石アラン様です、まだ宿から出る前に本題の情報を手に入れてしまうとは」

「た、たまたまです……でも、解決すべき問題点をこんなにも早く見つけることができたのは嬉しいですね……これから、一度そのレドロン公爵という方に会いに行ってみたいと思います」

「わかりました」


 ルーナさんは、いつものように快く僕の提案を受け入れてくれたので、僕たちは一緒にレドロン公爵のところへ向かうことにした。



◇ルーナside◇

 アランと一緒に、馬車でレドロン公爵家へ向かっている最中……ルーナは、アランの真剣な横顔を見ながら頬を赤らめていた。

 ────アラン様は、やはりとても素晴らしいお方です……お優しいと同時に凛々しいお方……そのようなアラン様と共に行動できているだけで私は幸せ……ですが、私はやはり、私はアラン様に愛を伝え、アラン様から愛を寵愛できる関係性になりたいと考えてしまいます……アラン様は私のことなど全く気に留めていないことは存じています、私はきっと愚かなのでしょう……そのようなことはわかっているのです、わかっているのですが……どうしても、止めることができないのです────あぁ、アラン様……愛しています。

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