第34話 幸せ
「そ、そういうわけじゃないんです!」
僕は、考える間もなくそう答えた。
ルーナさんとそういった関係だと言われることが嫌なわけではない。
「でも、その……実際にそういった関係では無い人なのに、そういったことをされるのはあまり良い気がしないというか、やっぱりからかわれてるような気がしてしまって……」
「私は……アラン様とでしたら、そういったことを言われても構いません」
「え……?」
僕とだったら、そういったことを言われても構わない……?
それは────
「変なことを言ってしまい申し訳ありません!お時間もお時間ですので、そろそろ共にご入浴致しましょうか!」
「は、はい、そうしましょう」
さっきのルーナさんの言葉は気になったけど、深く考えると抜け出せなくなって、旅の目的であるこの国に何かしらの形で貢献するというものを達成できなくなりそうなため、僕は慌てて入浴を提案してきたルーナさんと一緒に入浴することにした。
いつも通り、僕は腰にタオルを巻いて、ルーナさんは布を手に持って体を隠して浴場へと入る。
その浴場は、宿の一室についている浴場ということもあって、当然だけどいつも僕がルーナさんと入っている大浴場よりもかなり狭いものとなっていて、体を洗える場所も一つしかなかった。
おそらく、そもそも二人で入るように造られていないだろうからそれも当然と言えば当然だけど……
「……この広さだと、一緒に入浴したら体が密着してしまいそうですね」
僕がそう言うと、ルーナさんは頬を赤く染めて言った。
「私はそれでも構いませんが……アラン様は、いかがでしょうか?」
「僕も、大丈夫、です……」
僕がそう返事をすると、ルーナさんは嬉しそうに微笑んだ。
……大丈夫だというのは少し恥ずかしかったけど、ここで嘘を吐いてルーナさんのことを傷付けるようなことはしたくなかったから、きっとこれで良かったはずだ。
その後、ルーナさんはいつも通り僕の背中を流してくれていた────けど、その途中で台に布を置いていて体を隠していないルーナさんが、僕のことを後ろから抱きしめてきた。
「ル、ルーナさん!?」
相変わらずすごい大きさと柔らかさを背中に感じながら僕がルーナさんの名前を叫ぶと、ルーナさんが嬉しそうな声音で言った。
「王城以外の場所でも、こうしてアラン様と共に浴場に入り、アラン様のお背中に触れて、アラン様のお背中をお流しさせていただけることが、私は本当に幸せです」
そう言うルーナさんに、僕は向き合って言わないといけないと思ったことがあったので、振り返ってルーナさんの顔を見ながら言った。
「ルーナさん、僕も本当に幸せです……こうしてルーナさんと一緒に過ごせて、そしてルーナさんが僕と一緒に居てくれることを幸せだと言ってくれて」
「アラン様……」
ルーナさんは、赤目の中にあるピンク色の瞳孔を開き、頬を赤く染めて嬉しそうに僕の目を見つめてきた。
そして、僕もルーナさんの目を見つめ────ようとした時、僕はふと気が付いた。
ルーナさんは今、布で体を隠していない……そして、僕とルーナさんは今向き合っている────そのことに気付いた途端、僕は目の端でルーナさんの胸を捉えていることに気がつき、すぐに目を閉じて言った。
「す、すみませんルーナさん!その……少しだけ見えてしまいましたけど、本当に見えてはいけない部分は見えてませんから!」
「見え……?何の話でしょうか……?」
「な、なんでも無いです!」
その後、ルーナさんに背中を流してもらい終えると、僕たちはそれぞれ交互に体を洗って、一緒にお湯に浸かった。
────狭いところでお湯に浸かるとルーナさんと体が密着して、さっき視界の端にルーナさんの胸を捉えてしまったこともあって、僕は一人でとても恥ずかしい気持ちになっていた。
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