第28話 お供
ルーナさんと寝食を共にする生活を始めて、もう何日か経って、ルーナさんと一緒に眠ることや、ルーナさんと一緒にご飯を食べること、そして一緒に行動を共にすることにも慣れてきた……けど、ただ一つだけいつまで経っても慣れそうにない時があった。
それは────
「アラン様、本日もお背中をお流しいたしますね」
「は、はい!ありがとうございます!」
大浴場でルーナさんと過ごす、入浴の時間だ。
正確には、入浴の時間だけじゃなくて今のようにルーナさんに背中を流してもらう時間も含まれている。
「アラン様、お加減はいかがですか?」
「い、良い感じです」
「そうですか、良かったです」
ルーナさんは楽しそうな声音でそう言うと、引き続き僕の背中を洗ってくれる。
……今のルーナさんは、相変わらず僕の前にある台の上に布を置いているから、何も体を隠していない状態。
入浴している時もそうだけど、今僕の後ろでとても魅力的な体をしたルーナさんが何も体を隠していないと考えるだけで、緊張してしまう。
僕がそんなことを考えていると、ルーナさんが言った。
「アラン様は本当に日々努力なされていて、お疲れも溜まっていると思いますので、私にできることがあればお背中を流す以外にも何でも申してくださいね」
「ありがとうございます……でも、まだ全然です、ルーナさんのおかげでデドードさんが協力してくれることになって、今まで以上に民の人たちへの資金援助はできてきましたけど、まだ他国との小規模な戦争は続いていて、そっちの方を何とかしないと根本解決にはならないんです……でも、僕はまだ成人していなくて皇位継承権が無いので、そんなことも────ご、ごめんなさい!不安になるようなことを言ってしまって……戦争と言っても、本当に小規模なものなのでこの王城はもちろん、街に被害が出るようなことにもならないと思うので、安心してください」
頭の中にずっと残っていることを思わず言ってしまった……反省しないと。
────そう思っていると、ルーナさんが優しい声音で言った。
「アラン様は、お一人で抱え込みすぎなのでは無いですか?もう少し、私にもアラン様の抱えているものを共に抱えさせてください」
ルーナさんは……なんて優しい人なんだろう。
そうだ……僕のやっていることは、最終的にはこういう優しい人を守るためにもなるんだ。
「ありがとうございます、ルーナさん……でも、今ルーナさんに吐き出したおかげで改めてわかりました!今の僕に根本解決は出来なかったとしても、それ以外にできることはたくさんあると思うので、僕は今の僕にできることを精一杯やります!」
「お素敵です、アラン様……私も、どこまでもお供させていただきます」
「ルーナさん……本当に、ありがとうございます!」
「私の言葉です……アラン様、本当にありがとうございます」
ルーナさんは、優しさと重みのある声音でそう言った。
……僕はルーナさんに手助けしかしてもらっていないのに、どうしてルーナさんからそんな言葉を言ってもらえるのか僕にはわからなかったけど、その言葉にはとても重みがあったから、それを聞くようなことはできなかった。
その後、僕とルーナさんはそれぞれ体を洗うと、一緒に入浴をした。
「アラン様、明日は何かご予定があられるのですか?」
「明日は朝だけで、昼以降は何もありません」
「そうなのですね……アラン様、よろしければ明日は私と共に街へ赴きませんか?」
「わかりました、そうしましょう」
「ありがとうございます」
その後、入浴を終えた僕たちは、一緒にベッドの上で横なった────そして、その時……僕の頭に、ふと一つの考えが過った。
僕はさっきのルーナさんの提案を承諾してしまったけど、ルーナさんと二人で街に出かけるって……それはつまり────ルーナさんと、デート?
「……」
そう考えると、僕は緊張してしまってしばらくの間眠ることができなかった。
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