第26話 魅力的

「婚約者……」


 一応、僕は第三王子ということで今まで何度かそういった話をされたことはあって、お父様からもそろそろそういった相手を考えた方が良いと言われていたけど、そういった話は僕は婚約者の人ができるほどに立派な王族じゃないからと断ってきた。

 でも、皇位継承権を得れば、そんなことも言っていられない。


「……ルーナさんの言う通り、探すことになると思います」

「そう……なのですね、アラン様はどのような女性と婚約なされたいのですか?」

「え!?えっと……まだ、しっかりとイメージできているというわけではないんですけど……優しい人が良いです」

「ふふっ、アラン様ならもっと高望みもできると思われますが、アラン様は謙虚なのですね」


 そう言って、ルーナさんは優しく微笑んだ。


「……今までちゃんと考えてこなかったですけど、僕が皇位継承権を得るまであと半年ぐらいなので、その半年の間に婚約者のことも考えた方が良いのかもしれないですね」

「……そうですね」


 ルーナさんは、落ち込んでいるような声音で言った。


「ルーナさん?」


 僕はルーナさんの様子を気遣うようにそう言うと、ルーナさんはそのまま落ち込んでいるような声音で続けた。


「やはり、アラン様の婚約者の方となると、とても高貴な生まれの方になるのでしょうか……この国の貴族の方や、他国の王族の方など」


 ……どうしてルーナさんが落ち込んでいるのかわからないから何か気の利いたことを言うのは難しいから、とりあえず事実をそのまま伝えることにしよう。


「そんなことは無いと思います、事実この国の最初の国王の人は、生まれは貴族でもなんでもない女性の方を婚約者にしたという話で、それからも何度か同じようなことがあったそうです」

「っ……!そうなのですね!」


 僕がそう伝えると、ルーナさんは嬉しそうな声でそう言った。


「そのお話をお聞きできて、とても良かったです!」

「そ、そうですか」

「お勉強の邪魔をしてしまい申し訳ありませんでした、私はアラン様のお部屋の掃除をさせていただきますので、アラン様は私のことなど気にせずお勉強にご集中なさってください」

「そ、掃除!?ルーナさんにそんなことさせられません!」

「いえ!私がしたくてさせていただくのですからお気になさらないでください!では、失礼します!」


 ルーナさんは明るい声で楽しそうにそう言うと、本当に掃除を始めてしまった。

 ……どうしてルーナさんがあそこまで楽しそうにしているのか僕には全くわからなかったけど、ルーナさんが楽しいならそれが何よりだし、僕はそれ以上何も言わずに勉強に集中することにした────そして夜。

 ルーナさんと共にする二回目の入浴の時間となり、脱衣所へやって来るとルーナさんが言った。


「アラン様、一つ進言したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」

「はい、なんですか?」


 僕がそう聞くと、ルーナさんは真面目な顔つきで言った。


「昨夜、私とアラン様は直接肌を重ね合わせて抱きしめ合ったので、私はもう布で体を隠す必要は無いと思うのですが、まだ布は必要でしょうか?」

「な、何言ってるんですか!必要に決まってるじゃ無いですか!」

「……そうですね、失礼しました、アラン様の目に私の体などが入ってしまえばお目汚しになってしまいますね」

「そ、そんなことは思って無いです!ルーナさんの体はとても魅力的────す、すみません!そういった目で見ているわけじゃ無いんですけど、ただ……少なくとも、お目汚しなんてことは絶対に無いですから、安心してください!!」


 僕が強くそう言うと、ルーナさんは嬉しそうに言った。


「ありがとうございます、アラン様……アラン様のお体も、とっても魅力的ですよ」

「っ……!あ……ありがとう、ございます……」


 ルーナさんの言葉に少し照れてしまったけど、そのあとで僕とルーナさんは昨日と同じように一緒に入浴し、明日の朝ルーナさんの作ってくれた料理を食べられるということを楽しみにしながら、ルーナさんと一緒に眠りへとついた。

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