第22話 同行
「おはようございます、アラン様」
僕が目を覚ますと、僕の隣で横になっているルーナさんがそう挨拶をしてくれた。
「おはようございます、ルーナさ────ルーナさん!?」
と、とっさに驚いてしまった僕だったけど、すぐにルーナさんと寝食を共にする生活を始めたことを思い出して、落ち着きを取り戻した。
「ふ、二日目だと、やっぱりまだどうしても慣れないですね」
「今後少しずつ慣れていけば良いのです」
そう言って、ルーナさんは優しく微笑んでくれた。
「そう、ですよね」
……昨日、この綺麗なルーナさんと直接肌を重ね合わせて抱きしめ合ったなんて今でも信じられないけど、一度そのことは忘れて王族としてすべきことに注力しよう。
ということで、僕はルーナさんと一緒にベッドから体を起こして朝食を食べると、僕は荷物の整理をすることにした。
「本日もどこかへ赴かれるのですか?」
荷物を整理している僕のことを見て、ルーナさんがそう聞いてきた。
「赴く……というか、今日は王城の客室に招待した人物に用事があるんです」
「招待した人物、ですか……どなたを招待なされたのですか?」
「この国の有力公爵家の方を招待しました……理由は、その方はたくさんの財を持っているんですけど、全然生活に困っている人たちへの資金援助をしてくれないので、少しでも資金援助をしていただけるように交渉するためです……その交渉はもう何度か行って、その方に断られる形で失敗してるんですけど、今回こそは成立させてみせます!」
僕がそう言うと、ルーナさんは落ち着いた様子で言った。
「……公爵家の方と言っても、アラン様は王族の方なので王族としての権限を使えば交渉成立も可能なのでは?」
確かに、それができたら良かったのかもしれない……でも。
「僕はまだ成人してなくて皇位継承権もありませんから、強制力の強い権限は持っていないんです」
「だとしても、アラン様に交渉を持ちかけられればそれに頷くのが貴族の勤めではないのですか?」
「そ、それは言い過ぎだと思いますけど……頷いてくれると嬉しいですね」
あの人の性格を考えれば、今日交渉を行ったとしてもその交渉を成立させるのはきっととても難しい。
でも、だからって交渉しない理由にはできないし、今の僕にできることは限られているから、それならその限られてる中で全力を尽くすしか無いんだ。
僕が改めて自分にそう言い聞かせていると、ルーナさんが言った。
「……私も、同行させていただいてもよろしいですか?」
一瞬、どうしてルーナさんも同行したいんだろう……と思ったけど、きっと長く一緒に居たほうがより親睦を深められるからかな。
そういうことなら当然僕に断る理由はないし、仮にそういうことじゃなかったとしてもルーナさんが僕と同行したいと言ってくれているのにそれを断るなんてことはできない。
「はい、大丈夫です」
「ありがとうございます」
そして、時間になると、僕とルーナさんは二人で一緒に公爵家の方を招待した客室へと歩き始めた。
◇ルーナside◇
ルーナは、アランに付き添うようにアランの少し斜め後ろを歩きながら、とても幸福感で満たされていた。
アランと一緒に行動できる幸せ、アランに付き添える幸せ……だが、それと同時に今は少し怒りも抱いていた。
────アラン様に人々を救うための交渉を提案されたにも関わらず、それを断るとは……それはつまり、我が主に逆らうということ……これ以上そのような者にアラン様の大事なお時間を使わせるわけにはいきませんから、アラン様を信仰し、アラン様を愛するものとして……アラン様の願いのために、アラン様の手助けを致します。
ルーナは改めてアランへの信仰心と愛情を高めながら客室前へ到着すると、表情は微笑んだままだったがアランからの交渉を断った公爵家の貴族のことを思い出して、心を冷たくしながらアランと一緒に客室へと入った。
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