第20話 密着

◇ルーナside◇

 何も服を着ていない状態でルーナのことを抱きしめているという状況を理解したアランは、顔を赤くしながら固まってしまったようにルーナの目を見つめていた。

 そして、ルーナも同じくアランの目を見ながら、頬を赤く染めて少し微笑み、今アランに抱きしめられながら押し倒されていることで頭がいっぱいとなっていた。

 ────アラン様が、アラン様が……!私のことを抱きしめながら押し倒してくださるなんて……!あぁ、アラン様は腰に布を巻かれていますが、それ以外は何も着ていない状態であり、私も何も着ていない状態……そんな状態でアラン様と肌が重ね合わせることができるなど、私はなんという幸せ者なのでしょうか……やはり、我が種はとても慈悲深いお方です……しかしダメですアラン様、アラン様から一日に二度もこのようなことをされては、私も理性を保てるかわかりません……それに、アラン様のとても恥ずかしがっているような、そしてどうすれば良いのかわからず困っているようなお顔……アラン様にならどのようなことでもしていただきたいので、このようなことでそのようなお顔をされることはありませんのに……ですが、そんなお顔をなされるアラン様もとても素敵です、これからゆっくりと私の愛を受け止めてください……



◇アランside◇

 ────ど、どうしよう……ルーナさんが何も動かなくなってしまった。

 やっぱり、突然抱きしめられて押し倒されて気が動転してるのかな……常識的に考えて、そんなことを突然されたら、動揺どころか怖くなってしまってもおかしくない。


「……」


 でも、動揺してるのはルーナさんだけじゃなくて、僕も一緒……ルーナさんの柔らかい肌や、長い脚、そして大きくて弾力がある胸元が、僕の肌と重なっている────そのことで頭がいっぱいいっぱいで、次にどうすれば良いのかを思考することが全然できなかった……けど、そろそろどうにかしないといけない。

 僕は、恐る恐る口を開いてルーナさんに言う。


「ルーナさん、とりあえず体を起こそうと思うので、お体をできるだけ見えないようにしていただいても良いですか?」

「……」


 そう聞いた僕だったけど、ルーナさんは何も言わなかった。

 まだ気が動転してるのかな……だとしたら、もう少し間を空けてからの方がいいのかもしれな────い!?


「ル、ルーナさん!?」


 僕がルーナさんの様子を窺っていると、ルーナさんは突然僕のことを抱きしめてきた。

 それによって、僕たちは互いのことを抱きしめ合っているということになり、ルーナさんの体の感触をさらに強く感じるけど────


「ルーナさん、どうしてこんなことを!?」


 驚いた勢いで僕がそう聞くと、ルーナさんは頬を赤く染めたまま口を開いて言う。


「今アラン様が私からお離れになられましたら、何も着ていない私の体が露わとなってしまいます」

「そ、それは、手で一瞬だけ体を隠したりしてもらえれば、当然僕もルーナさんのお体を見ないようにするので、心配しないでください」


 できるだけ落ち着いてそう伝えた僕だったけど、ルーナさんは僕のことを抱きしめる力をさらに強めて言う。


「すみません、今のは建前です……本当は、こうしてアラン様と肌を触れ合わせている時間が終わってしまうのが恋しいのです」


 僕と肌を触れ合わせている時間が終わってしまうのが、恋しい……?

 ……普段なら何か考えられそうだけど、ルーナさんと抱きしめ合っている今はとてもじゃ無いけどそんなことはできそうにない。


「あ、あの、よくわからないですけど、その……とりあえず、一度僕のことを離してくれませんか?ルーナさんに抱きしめられていると、ルーナさんから腕を上手く離せないですし、何より……体が密着しているので……」

「アラン様の心臓の鼓動が、私の体に伝わってきます……アラン様は今、ご緊張なされているのですか?」

「はい……女性の方とこんなに体を密着させることは今まで無かったので、緊張……というか、ドキドキ……してます」

「っ……!……私もです、アラン様」


 僕が、恥ずかしさを忍んでそう伝えると、ルーナさんは甘い声でそう言ってさらに僕のことを抱きしめる力を強めた。

 その後、少しの間僕たちは互いのことを抱きしめ合った……ずっとドキドキしていたけど、どうしてだろう────ルーナさんと抱きしめ合っていると、とても温かい気持ちになった。

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