第19話 神様
◇アランside◇
ルーナさんの背中を流し終わった僕は、ルーナさんの背中から手を離して言う。
「このぐらいで良いですか?」
僕がそう聞くと、ルーナさんは小さく頷いて言う。
「はい、とても良い時間を過ごさせていただきました」
良い時間……そう言ってもらえたなら、ルーナさんの背中を流して良かったな。
心の中でそう思いながら、僕はルーナさんに言う。
「じゃあ、今度こそ別々の場所で体を洗いましょう」
「そうですね」
その後、僕とルーナさんは別々の場所で体を洗うと、隣り合わせになって一緒にお湯に浸かった────が、その時。
ルーナさんが、手に持っていた布を取って、お湯に浸かる場所の縁に布を置いた。
「ル、ルーナさん!?な、何をしてるんですか!?」
「お湯で体は見えなくなるので、不要かと思い布を置きましたが……いけなかったでしょうか?」
た、確かにお湯で体は全く見えないけど……今、目の前に何も体を隠していないルーナさんが居ると思うとかなり緊張してしまう。
……けど、そんなことルーナさんに直接言えるわけもない。
「……いえ、大丈夫です」
そう言いながら、僕は咄嗟にルーナさんから視線を逸らす。
その後、しばらくお湯に浸かっているとルーナさんが言った。
「本当に、とても素敵な大浴場ですね……身も心もリラックスできそうです」
「そ……そう、ですね」
身はリラックスされるけど、今何も着ていないルーナさんが隣に居ると思うと心は全然リラックスできない。
「しかし、アラン様……私からご提案させていただいたことなのですが、本当にこれから私と寝食を共にし、入浴も共にしていただいてもよろしいのですか?」
ルーナさんが、少し不安そうな声音で言っていたため、僕はしっかりとルーナさんの目を見て話す。
「はい、最初の方は色々と慣れないことがあって大変かもしれないですけど、ルーナさんと一緒に生活するのはきっと楽しいと思います」
「ですが、私は王族でも無ければ貴族でもありません……そのような私が、本当にアラン様と────」
「王族とか貴族とか、そういうのは関係ありません!僕は、ルーナさんと一緒に生活するのが楽しそうだと思ってます!」
ルーナさんの言葉を遮るのは申し訳なかったけど、この言葉を伝えることを我慢できなかったため、僕はハッキリとそう伝えた。
「っ……!」
その僕の言葉を聞いたルーナさんは、目を見開いて驚いた様子だったけど、僕はさらにそのルーナさんの目を見ながら続ける。
「それに、ルーナさんは聖女様の中でも最高位とされる神聖の位を持っているすごい人じゃないですか……ルーナさんは僕がたくさんの人を救ってきたって言ってくれたましたけど、きっとルーナさんも、今までたくさんの人を救って来たんですよね」
僕がそう伝えると、ルーナさんは頬を赤く染めながら言った。
「それは、全て我が主のおかげなのです……私が今こうして生きていることも、様々人たちに助力させていただいたことも、今こうしてアラン様と過ごせていることも……」
「……それなら、ルーナさんの神様に感謝しないといけないですね」
その後、しばらくお湯に浸かりながら話した僕とルーナさんは、一緒に脱衣所へと戻った。
ルーナさんとの初めての入浴だったから、何かトラブルが起きないかと心配していたけどどうやらその心配は無かったようだ。
脱衣所に入って数歩歩くと、僕の前を歩いていたルーナさんが僕に背中を見せながら言う。
「すみません、アラン様……大浴場に布を置き忘れてしまったようなので、取りに戻ります」
布……?あぁ、そういえばルーナさんは浸かる場所の縁に布を置いていたな……ルーナさんが僕の前を歩いていたから、ルーナさんが布を忘れていたことに気が付かなかった。
「わかりました」
僕がそう言うと、ルーナさんは大浴場の方、つまりルーナさんの後ろに居る僕の方に振り返────ろうとしているが、僕はこの時気が付いた。
ルーナさんは今布を持っていない、そしてここは大浴場じゃないからルーナさんの体は今全く隠れていない状態……?
「ま、待ってください!ルーナさん!」
「はい……?」
僕がそう呼びかけるも、ルーナさんはもう僕の方に振り向く動作を始めていたため────僕は、ルーナさんが僕の方を向いた瞬間に、ルーナさんの体が僕に見えてしまわないようにルーナさんに抱きついて、その勢いでルーナさんのことを脱衣所の床に押し倒してしまった。
「ご、ごめんなさい!ルーナさん!お怪我は大丈夫ですか!?」
「アラン様……はい、大丈夫です」
顔を上げてルーナさんのことを確認してみると、幸いルーナさんの背中に僕の腕を回していたから、ルーナさんに怪我は無かったみたいだ。
「……」
ルーナさんに怪我が無いかで頭がいっぱいになっていた僕だったけど、ルーナさんに怪我が無いことが確認できると────今度は、正真正銘何も服を着ていないルーナさんと肌を重ね合わせていることに意識が集中してしまい、そのことで頭がいっぱいいっぱいとなった。
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