第16話 入浴

◇アランside◇

 ────ルーナさんと一緒に夜ご飯を食べ終えると、ルーナさんがあることを聞いてきた。


「アラン様、いつもご入浴はどちらで?」

「王城の中に僕用の大浴場があるので、そこで入浴してます」

「そうなのですか」

「僕のためだけの大浴場があるなんて勿体無い気もしたんですけど、僕の頑張りを認めてくれる人たちが僕のためだけに作ってくれたんです」

「勿体無いなどということはありません、アラン様はそれほどにたくさんの人々を救っているのですから」

「あ、ありがとうございます……」


 今までも色々な人が僕のことを評価してくれたけど……どうしてだろう。

 ルーナさんの言葉は、今までの人たちとどこか重みが違うような気がする。

 そんなことを思いながら、僕は伝えたいと思っていたことを伝えることにした。


「その僕用の大浴場は、ルーナさんもお好きに使ってもらっても大丈夫なので、入りたい時に入浴してくださいね」

「私がアラン様用の大浴場に入らせてもらうなど、恐れ多いですが……アラン様がそう仰ってくださるのであれば、そうさせていただきます」

「はい!」


 今日は寝食を共にする生活一日目で、街を回ったりもしてきっとルーナさんも疲れているだろうから、今からでも入浴して疲れを取りたいはずだ。


「ルーナさん、僕用の大浴場まで案内するので、先に入浴してください」

「いえ、私が先になどと……アラン様、一つご提案があるのですが、よろしいでしょうか?」

「はい、何ですか?」


 僕がそう聞くと、ルーナさんは頬を赤く染めて言った。


「よろしければ────寝食だけでなく、入浴も共に致しませんか……?」

「……え?」


 入浴も、共に……!?


「え……!?ど、どうしてですか!?」

「できるだけ長い時間を共にしたほうがもっとアラン様と親睦を深められると考えたからです」

「親睦……それは、僕ももっとルーナさんと親睦を深めたいですけど……本当に、良いんですか?」

「はい、アラン様さえ良ければ」


 そう言って、ルーナさんは笑顔を見せてくれた。

 ……僕と親睦を深めるためにルーナさんがしてくれた提案を、断るわけにはいかない。


「わかりました……今から一緒に、大浴場に向かいましょう」

「ありがとうございます」


 ということで、僕はルーナさんの提案を受け入れて、ルーナさんと一緒に入浴することにした。

 そして、ルーナさんと一緒に大浴場手前にある脱衣所まで来ると、僕とルーナさんはそれぞれ服を脱ぐことにした。

 服を脱いだ僕は、腰に布を巻いて大浴場の入り口前に立つ……それから少しの間待っていると、ルーナさんの声が聞こえた。


「お待たせいたしました」

「い、いえ、気にしないでください」


 そう言いながら僕の隣まで来たルーナさんの方に視線を送る。

 ルーナさんは、体の局部が見えないように手に布を持っていたけど、それはあくまでも局部が見えないようにしているだけで、ルーナさんの色白な肌や、とても大きな胸に大人びた腰つきなどは見えている────そして、僕は咄嗟に朝ルーナさんのことをベッドに押し倒してしまった時のことを思い出した。

 僕は朝、ドレス越しとはいえあの大きな胸を────


「アラン様、どうかなされましたか?」

「な、何でもないです!」


 僕は首を横に振って、思い出したことをすぐに忘れる。

 ……とりあえず、今は余計なことは考えないようにしよう。

 せっかく一緒に入浴するんだから、ルーナさんと親睦を深めることだけを考えるんだ。

 僕は、自分にそう言い聞かせながら言う。


「ルーナさん、大浴場に入りましょう」

「はい、そうしましょう」


 そして、僕とルーナさんは一緒に大浴場へと入って行った。

 ────この後、まさかあんなことになるとは、この時の僕はまだ想像すらしていなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る