第15話 始まり

「王城の料理長の方がご用意なされた物なだけあって、とても美味しいお料理ですね」

「はい、毎日食べてても本当に飽きないです」


 そう話しながら朝食を食べていた僕とルーナさんだったけど、僕はふとルーナさんの料理を食べている姿を見ていた。


「……」


 僕も王族として恥ずかしくないように食事時のマナーとかはかなり学んだけど、ルーナさんの所作は一つ一つが細部まで丁寧でとても綺麗だ……思わず見てしまう。

 こういうことを、目が奪われると言うんだろうか。


「アラン様?どうかなされましたか?」


 食事を進める手を止めてルーナさんのことを見ていた僕のことを不思議に思ったのか、ルーナさんがそう聞いてきた。


「すみません……ルーナさんの食事を食べる時の所作がとても綺麗で、つい見てしまっていました」

「嬉しいです、アラン様もとてもお綺麗ですよ?」

「僕は一応王族なので、食事時のマナーを教え込まれてるだけなので」

「一応、などと言わないでください、アラン様は立派な王族の方ですよ」


 立派な王族……一体、何をすればその立派な王族というものになれるんだろうか。

 僕はそれを目指して今まで色々と頑張って来たけど、今のところその立派な王族になれる未来が全然見えない。


「……今日は、昼間から街に出て孤児院とか資金に困っている人たちの資金援助のために街を回る予定なんです」

「そうなのですね」

「でも、こんなことを続けていても結局根本解決にはならないと思うので、僕のしていることに意味があるのかどうか……これで立派な王族に少しでも近づけているのかどうか、その答えが僕にはまだ見えません」


 僕が思わず弱音を吐いてしまうと、ルーナさんが僕に優しく微笑みながら言った。


「アラン様は、今のままでもとても立派な王族の方ですよ……きっと、アラン様の今までの善行で、アラン様に救われた方は大勢居るでしょう」

「そう、でしょうか……そう、だと良いんですけど……」

「そうです、私も主に救われましたから……そして、その主には何もかも捧げたいと思うほどに感謝しています」

「ルーナさんにそこまで言ってもらえるなんて、ルーナさんの神様はとても幸せな神様ですね……ありがとうございますルーナさん、とりあえず僕は今できることを精一杯します!」

「はい、私も精一杯手助けさせていただきます」


 その後、二人で朝食を食べ終えて、僕が街に出かける準備をしていると、ルーナさんが話しかけてきた。


「アラン様、私も同行してもよろしいでしょうか?」

「はい!ルーナさんが一緒に来てくださるなら、とても嬉しいです!」

「ありがとうございます」


 そして、僕とルーナさんは二人で一緒に街に出て、孤児院や資金に困っている人たちの資金援助のために街を回った。



◇ルーナside◇

「アラン様、いつも本当にありがとうございます……」

「いえ!僕にできることがあったら、なんでも言ってください!」


 街で資金援助をしているアランの隣で、ルーナは思う。

 やはり────我が主はとても偉大で慈悲深い方だと……そして、その慈悲深さに救われ、アランのことを主とし、寝食を共にすることまでできた自分はこれ以上ないほどの幸せ者だ、とも。

 ルーナは、隣に居るアランに話しかける。


「……アラン様は、いつ頃からこのようなことを?」

「最初は僕が七歳ぐらいの時で、路地裏に居た食べ物に困っている女の子に食べ物をあげるところから始まったんです」

「……その方の容姿などは覚えているのですか?」

「覚えてます……黄金髪で、可愛い女の子でした」

「っ……!」


 ルーナはそのアランの発言に目を見開いて驚いたが、アランはそのことに気づかずに続ける。


「でも、あれから十年も経っているので、その女の子のことを見てもその女の子だと気づくのは難しいかもしれません」

「……そうですね」


 ルーナは驚いたのを抑えて、優しく微笑んでそう言う────そして、資金援助のための街回り終え、王城に帰って来ると、アランが昼食を取ってくると言って部屋を後にし、その部屋にはルーナだけが残った。

 そして、ルーナは膝から崩れ落ち、頬を赤く染めながら口角を上げ、赤目の中にあるピンクの瞳孔を大きく開いて言う。


「アラン様……!まさか、あの時が始まりだったとは……!あの時アラン様に救われた私が、今こうしてアラン様の手助けを……あぁ、アラン様……私はこの一人では抱えきれないほどの愛を、どうすれば良いのでしょうか……」

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