第14話 夢

 これからルーナさんと寝食を共にすることが決まったので、ルーナさんはそのために必要なものを一度聖堂から王城に持ってきて、聖女服に着替えた状態で僕のところへ戻ってきた。

 そして、持って来た荷物を整理し終えて言った。


「アラン様は、いつも朝食はどうなされているのですか?」

「いつもは、料理長に作ってもらってます」

「そう、ですか」


 ルーナさんは、どこか落ち込んだような表情をした。


「ルーナさん……?どうかしたんですか?」

「いえ……王城の料理長の方にお料理をご用意していただいているアラン様からすれば美味しく無いのかもしれませんが、もしよろしければ毎朝……とは言わずとも、時々私の朝食を食べていただけ無いでしょうか?」

「え?ルーナさんの料理、ですか?」


 僕はそれを少し想像する。

 ルーナさんは何をしていても似合いそうだけど、料理をしているルーナさんというのもとても似合っている……そして、ルーナさんの料理をルーナさんと一緒に話しながら楽しく食べる……とても良い時間になりそうだ。


「……すみません、やはり料理を専門的に学んでいない私の料理など、アラン様のお口に入れるわけには────」

「ルーナさんの料理、食べてみたいです!」


 しまった……ルーナさんが何かを言っていたのに、思っていたことをついそのまま口に出して遮ってしまった。


「す、すみません!ルーナさんのお話を遮ってしまって……」


 僕がそう言うと、ルーナさんは見開いた目で僕のことを見て、少し間を空けてから笑顔で言った。


「お気になさらないでください、本日は料理長の方がお料理を用意してくださっていると思うので、また後日私がアラン様にお料理をご用意させていただきますね」

「本当ですか!?ありがとうございます!」


 嬉しくなった僕は、その嬉しさを声に表してそう言った。

 そして、僕の部屋のドアノブに手を掛けて言う。


「ルーナさん!今から食堂に料理を取ってくるので、ルーナさんはこの部屋で待っててください!」

「はい、わかりました」


 ルーナさんが優しい声音でそう言うと、僕は部屋から出てできるだけルーナさんのことを待たせないよう急いで料理の置かれているであろう食堂へと向かった。



◇ルーナside◇

「あぁ、主よ……あなた様はどこまでお優しい方なのですか……」


 ルーナは、一人になったアランの部屋で手を合わせてそう呟いていた。


「私のような存在との寝食を許してくださり、さらにはとても明るい笑顔で私のお料理を食べたいと申してくださるなんて……あぁ、あの明るくお優しい表情に志、アラン様はあの時から何も変わらず、いえむしろ成長しているのですね……我が主よ、本当に感謝が絶えません」


 その後少しの間アランに感謝し続けたルーナは、先ほどアランに胸を触られベッドに押し倒された時のことを思い出す。


「意図的では無かったとしても、あれがアラン様に求められる感覚の一端……あれは素晴らしかった────ですが、アラン様はご自身でも仰っていた通り、女性との関わりが薄いようですね……私にとってそれは嬉しいことではありますが、私の胸を触った程度であれほどの反応を見せられていては、いつ愛の行為を行えるか先が見えません……」


 ルーナにとっては、愛と信仰のもとアランに身も心も捧げ、その愛を寵愛することこそが夢。


「それを実現するためには、私が……」


 ルーナはこの瞬間、少し口角を上げてあることを決めた。

 ────この寝食を共にする生活の中でその夢を実現させていこう、と。

 その夢が実現した時のことを考えるだけで幸せな気持ちになるルーナだったが、二人分の料理を持ったアランが部屋に戻ってくると、ルーナは一度そのことを考えるのをやめて、アランと一緒に朝食を食べることにした。

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