第8話 アプローチ

 パーティー会場に到着すると、そこにはたくさんの人が居て、ダンスを踊っている人や、音楽を楽しんでいる人、料理を食べたり、テラス席でお酒を嗜んだりしている人など、本当に多種多様な人たちが居た。


「皆さんすごく楽しそうですね、ルーナさん」

「そうですね……それよりもアラン様、一度ここから────」


 ルーナさんが何かを言いかけたところで、複数人のドレスを着た女性が僕たちの方に歩いてきた。

 そして、その人たちがすごい勢いで話しかけてくる。


「第三王子アラン様!どうか私と一緒に一曲踊ってください!」

「いいえ、アラン様!私と共に音楽を楽しみましょう!」

「アラン様!あちらのお料理がとても美味しいので、ご一緒に嗜みましょう!」

「アラン様、良ければ今後必要になると思われる夜の楽しみ方を私と────」


 事前に言われていたけど、まさか本当にこんなにもたくさんの女性がアプローチしてくるなんて……

 わかっていたことでも、実際にその状況になるとどうすれば良いのかわからず僕は何もできずに居ると、僕の隣に居るルーナさんが言った。


「皆様、お静かにしてください」


 色々な人の声が入り混じっていたはずなのに、ルーナさんの声だけは透き通って聞こえた……そして、それは僕だけでなく他の人たちも同じだったのか、その人たちも全員ルーナさんの言った通りに静かになった……そして、ルーナさんはその透き通った声で続けて言う。


「ここに居られる方は、この国の第三王子であられるアラン・デーヴィット様です、彼の方の前でそのような慎みのない行動をするのは控えてください」


 ……普段話している時はとても優しい人と言ったイメージだけど、今は優しいとか優しくないとか、そういう雰囲気じゃない。

 良い悪いのない、唯一無二の存在感────これが、神聖の位を持つ聖女様。

 ルーナさんがそう言うと、周りの人たちはルーナさんのことを見ながら言った。


「……あの方はどなた?」

「アラン様と腕を絡めているみたいだけど……」

「……っ!アラン様に夢中で気づかなかったけど、あの方はエルリエラ様だわ!」


 一人の女性がそう言うと、他の人たちも話し始める。


「エルリエラ様って、あの神聖の聖女様……?」

「言われてみれば、そんな雰囲気が……」

「間違いないわ!私一度お見かけしたことがあるもの!」

「じゃあ、今回のパーティーのアラン様のパートナーはエルリエラ様ってこと……?」

「……今回は身を引くしかないわね」


 目の前に居る女性たちがルーナさんの正体に気づくと、しばらくしてから沈黙した。

 そして、ルーナさんがその人たちに言う。


「皆様、今後もアラン様のことを全力でご支援なさってくださいね」


 ルーナさんがそう言うと、目の前に居る女性たちは全員頷いた。

 そして、ルーナさんは僕の方を向くと、明るい笑顔を見せてくれて言った。


「さぁ、パーティーを楽しみに行きましょう」

「は、はい!」


 僕はこの時、やっぱりルーナさんはすごい人なんだということを、改めて実感することができた。



◇ルーナside◇

 アランとパーティー会場を歩きながら、ルーナはとても気分が高揚していた。

 アランに近づこうとする女性をアランから遠ざけることができ、自分だけがアランとパーティーを楽しむことができる状況を作り出すことに成功したからだ。

 アランに視線を向けてくる女性がたくさん居ることに気が付いた時や、その女性たちがアランに近づいてきた時、そしてアランの生まれや容姿、性格などの表面的なものに惹かれて、ルーナからすれば汚い欲望を持ってその女性たちがアランと共に時間を過ごそうとしていることなどに気付いたときなどは、その女性たちに殺意を抱き思わず殺気を出してしまいそうになったが、それをどうにか抑えることに成功して今ではアランと二人でパーティーを楽しむことができる状況に居る。


「ルーナさん、あそこに美味しそうな料理があるので、テラスとかで一緒に食べませんか?」


 アランからそう提案されて、思わず飛び跳ねたくなるほど嬉しくなったルーナだったが、そんなことをすれば品が無いと思われてしまうかもしれないため、そんなことをせずに表面上は落ち着いて答える。


「はい、そうしましょう」


 そして────この後、ルーナは信仰心ではなく愛の感情で動き、アランとの関係性を少し進展させるべくある行動に出ることにした。



 この作品の連載が始まってから、一週間が経過しました!

 この一週間の間にこの物語をここまで読んでくださったあなたの素直な感想をいいねや☆、コメントや感想レビューなどで気軽に教えていただけると本当に嬉しいので、この物語の続きを楽しみにしてくださっている方や現段階でこの作品を好きだと思ってくださっている方は是非よろしくお願いします!

 作者は今後もこの物語をとても楽しく描かせていただこうと思いますので、あなたも引き続きこの作品を楽しんで読んでくださることを願っています。

 今後もよろしくお願いします!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る