第7話 愛
「アラン様、パーティー用の正装もとてもよくお似合いです」
船上パーティーが行われる船の前まで来ると、ルーナさんがそう言って僕のことを褒めてくれた。
「ありがとうございます……ルーナさんも、やっぱりそのドレスがとてもよくお似合いです」
「光栄です」
こんなに綺麗な人が、この船上パーティー中は僕のパートナーなんて……そう考えるとちょっと緊張してきたけど、今回はあくまでもたくさんの女性からのアプローチを乗り切ることが目的だから、そっちの方に集中しよう。
もしかしたらアプローチなんてされることは無いかもしれないけど、それならそれで純粋にルーナさんとこの船上パーティーを楽しめば良いだろう。
「行きましょう、ルーナさん」
「待ってください!」
そう言って船の中に入ろうとした僕のことを、ルーナさんは声で呼び止めた。
僕は隣に居るルーナさんのことを見て言う。
「どうかしましたか?」
僕がそう聞くと、ルーナさんは僕の腕を手で軽く摘みながら言った。
「パーティーでは、パートナーと腕を絡めるものだと思うので、私たちも傍から見て関係性を疑われないように腕を絡め身を寄せ合った方が自然だと思うのですが……いかがでしょうか?」
……確かに、パーティーでパートナーの人と身体的接触が無いのは少し不自然に見られてしまうかもしれない。
かと言って、たくさんの女性からのアプローチを乗り切るためにパートナーをしてもらっているルーナさんにそこまでしてもらっても良いのかどうかは少し悩みどころだけど────
「……」
ルーナさんの目がどこかキラキラしているような気がするし、ルーナさんから提案してくれたことだからここは素直にその提案を呑むことにした。
「わかりました、そうしましょう」
「はい……!ありがとうございます!」
どちらかと言えば感謝を伝えるのは僕の方だと思うけど……なんて思いながら、僕は右隣に居るルーナさんに合わせて僕の体と僕の右腕の間に少しスペースを作った。
すると、ルーナさんはゆっくりとその僕の右腕に自分の左腕を絡めて来て、体を密着させてきた。
そして、ルーナさんは頬を赤く染めながら、声音はどこか甘い声で言う。
「では、行きましょうか」
「は、はい!」
僕とルーナさんは、そのまま腕を絡めながら船上パーティーが行われている船の中へと足を踏み入れた。
……ルーナさんの細い指や腕、そして柔らかい胸元の感触を少し感じたりもしたけど、僕は全力でそのことを意識しないことにした。
◇ルーナside◇
アランと腕を絡め、身を寄せて歩きながら船の中に入り、そのパーティー会場に向かっているルーナは────とても気分が高揚していた。
崇め、愛しているアランと腕を絡め、身を寄せることができる幸せを感じていたからだ。
自分の主であるアランと腕を絡め身を寄せることなど無礼だと言う自分が居るが、それ以上にアランと腕を絡め身を寄せ合いたいと思う自分が居た。
「あぁ、主よ……ダメです、私……我慢できません、もっと……もっと深く、主と触れ合いたいです」
信仰すべきアランに対してこのような感情を抱くことは間違いなのだとわかっていても、一度深く抱いてしまったらその愛という感情は手放すことができない────ルーナはこの時、今まで以上ぶアランのことを愛したいと思った。
そして、アランのことを愛するだけでなく、愛されたいとも────
「あぁ……このようなことを思ってしまう私のことを、どうかお許しください……我が主、アラン様……心から愛しています……」
その後も、パーティー会場に着くまで、ルーナはアランには聞こえない声で似たようなことを呟いていた。
────そして、パーティー会場に着くと、たくさんの女性がアランに視線を送っていることに気付き、ルーナは一気に目を暗くしていた。
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