第6話 ドレス

 街に到着すると、僕とルーナさんは一緒にドレスの売っている洋服店へと向かっていた────その道中。


「見て!アラン様よ!」

「え!?アラン様!?どうしてアラン様がこんなところに!?」

「隣に居るのは……エルリエラ様だ!」

「あの二人がご一緒に……!?」


 街を歩いていた人たちが僕たちに気付いたようで、僕たちの方を見て何かを話している様子だった。

 ……僕が一人、もしくはルーナさんが一人だったとしたなら話しかけて来たのかもしれないけど、肩書き上第三王子の僕と神聖の位を持つ聖女様が一緒に居ると話しかけづらいんだろうか。


「アラン様は人気なのですね」

「僕は全然……むしろ、エルリエラさんの方が色々な人から慕われていると思いますよ」

「そのようなことはありません!皆、アラン様のことを敬い慕っています!」

「……ありがとうございます」


 この街を見渡してみた感じ、この街はかなり発展しているみたいだけど、場所によってはまだそこまで発展していない場所なんかもある。

 ルーナさんの言った通り、僕のことを敬ってくれてる人や慕ってくれてる人が一人でも居るなら、その期待に応えるためにも、僕は王族の一人として一人でも多くの人たちを幸せにできるように努力するんだ!


「皆、アラン様のことを敬い慕っています……が────アラン様のことを一番敬い、慕っているのは私です……あぁ、アラン様……」


 僕が改めてそう決心していると、隣で歩いているルーナさんが小さな声で何かを呟いていた。


「ルーナさん?」

「なんでもありません……そろそろ洋服店へ着きますね」

「そうですね」


 その後、洋服店へ到着した僕とルーナさんは、たくさんのドレスが飾られている場所へと足を運んだ。

 この街に来るまでの馬車の中で、僕はどんなドレスがルーナさんに似合うのかを考えていた。

 そして、その時に出た結論は、ルーナさんならどんなドレスでも似合うというものだったけど────本当に、今目の前にあるドレスのどれを着てもルーナさんに似合いそうだ。


「アラン様は、どれが私に似合うと思いますか?」

「どれでも似合うと思いますけど、どれがって言われたらこの赤のドレスとか似合いそうだと思います」


 そう言って、僕がその赤のドレスに視線を送ると、ルーナさんはその赤のドレスを手に取って言った。


「試着室で試着してみますね」

「は、はい!」


 そして、ルーナさんはそのまま赤のドレスを手に持って試着室へと入り、僕はルーナさんが着替え終えるのを試着室の前で待つことにした。

 ルーナさんのドレス姿……僕は、今まであまり感じたことのない緊張感を感じながら、どこかそわそわしながらルーナさんが着替え終えるのを待ち────ルーナさんは着替え終えると、赤のドレスに身を包んで試着室から出てきた。


「どうですか……?アラン様」

「と、とっても似合ってます!」

「それは良かったです」


 そう言って、ルーナさんは僕に笑顔を見せた。

 派手さのある赤のドレスは、似合うかどうかが人によって違うドレスだと思うけど、ルーナさんの顔やスタイル、雰囲気にはその派手さがとてもよく似合っていて、その派手さすらも綺麗に見える。


「アラン様に似合っていると仰っていただけたので、このドレスを購入することにします」

「え……?そんな即決でも良いんですか?」

「はい、アラン様が喜んでくださるのであれば、私にとってはそれが一番ですから」


 その後、ルーナさんは元々着ていた聖女服に着替えると、そのドレスを購入した。

 そして、僕とルーナさんは一緒に洋服店から出て街の入り口までやって来た。


「アラン様、本日はありがとうございました」

「いえ、僕の方こそ楽しかったです……また、二日後の船上パーティーでお会いしましょう」

「はい、その日を心待ちにさせていただきたいと思います」


 その会話を最後に、僕とルーナさんは別々の馬車に乗って帰り道を進んだ────二日後。

 僕とルーナさんは、二人で一緒に船上パーティーが行われる船の前まで来ていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る