第5話 お願い
「船上パーティーまであと二日、楽しみですねルーナさん」
船上パーティーが行われる二日前、僕はルーナさんの居る聖堂に来てルーナさんと一緒に時間を過ごしていた。
色々と考えないといけないことや悩み事なんかもずっとあるけど、今日はとりあえずルーナさんに他のことで負担をかけないようにするために、特にそういった話はせずにただ一緒の時間をのんびりと過ごしていた。
「はい、とても楽しみです、私にアラン様のパートナーが務まるか少し不安はありますが、全力で果たさせていただこうと思います」
ルーナさんはとても綺麗で礼儀正しい人だから、僕のパートナーが務まるどころかこの船上パーティーでの僕のパートナーとしては、これ以上無いほどの逸材とも言えるだろう。
「本当にありがとうございます」
その後、しばらく間を空けてからルーナさんが少しそわそわした様子になって口を開く。
「アラン様……一つ、お願いを聞いていただいてもよろしいでしょうか?」
「はい、何ですか?」
僕がそう聞くと、ルーナさんは頬を赤く染めながら言った。
「私がアラン様にこのようなことを言って良いものかとも悩みましたが、よろしければ本日一緒に街に洋服を買いに行きたいのです……!」
そわそわした様子で聞いてくるからどんなことかと思ったけど、一緒に洋服を買いに行くぐらいなら何も問題は無いし、むしろルーナさんと洋服を買いに行くのはとても楽しそうだ。
「わかりました、行きましょう」
「ありがとうございます!」
ということで、早速聖堂から馬車に乗って街へ向かうことにした。
そして、その馬車に乗っている最中。
洋服を買いに行くということで、僕はルーナさんの服を何となく見ていた……ルーナさんの今着ている服は、神聖の人用の聖女服。
一般的な聖女服は黒色をベースとして白が少し入っていて頭にはベールを着ているけど、ルーナさんの神聖の人用の聖女服は、白をベースとしてところどころに黄金が入っている。
そして、一般的な聖女様は頭にベールを着ていると言ったけど、実際は聖女様は聖堂が関わる祭り事の時以外はベールをしてもしなくてもどちらでも良いということらしくて、ルーナさんの場合は普段ベールを着ていないからその黄金で綺麗な髪をベールの代わりに靡かせている……これは僕の個人的な意見だけど、ルーナさんと神聖の人用の聖女服はとても似合っている。
「聖女様は普段聖女服を着てるイメージがありましたけど、今日買いに行くのは休日用の服ってことですか?」
僕が純粋な疑問を聞いてみると、ルーナさんは首を横に振って言った。
「いえ……本日買いに行くのは、二日後に控えている船上パーティーの時用のドレスです……恥ずかしながら、今までは基本的にそういったものに参加させていただくときは聖女服で参加していたので、ドレスというものを持っていないんです」
「なるほど……でも、今回の船上パーティーも、聖女様ってことなら聖女服で参加しても良いと思いますよ」
僕がそう伝えると、ルーナさんはそわそわした様子で頬を赤く染め、目を泳がせながら言った。
「そう、なのかもしれませんが……こんなことを思ってしまうのは聖女として恥ずべきことかもしれません、が────できることなら、アラン様に私のドレス姿というものも見ていただきたいのです」
僕にドレス姿を見て欲しい……その理由はわからないけど、そう言ってくれるなら僕も一つ言えることがある。
「僕も、ルーナさんのドレス姿を見てみたいです!」
「ほ、本当ですか!?」
「はい!ルーナさんは綺麗な方なので、きっとドレスが似合うと思います!」
「っ……!」
ルーナさんは、さっきよりも頬を赤く染めて、手を合わせると小さな声で何かを呟いた。
「あぁ、主よ……主にそのようなことを言われてしまったら、私……」
ルーナさんがなんて言っているのかは聞こえなかったけど、嫌がっている様子では無かったから特に気にしないことにして、僕は街に着くまでの間どんなドレスがルーナさんに似合うのかを考えることにした。
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