第4話 パートナー
「ルーナさん……?どうかしましたか?」
僕がルーナさんにそう呼びかけると、ルーナさんは一度目を見開いてからすぐに目の輝きを取り戻して普段通りの笑顔で言った。
「いえ、ご心配をおかけして申し訳ありません」
「そうですか……?」
「はい、大丈夫です」
そう言って、ルーナさんは僕に微笑みかける。
……本当に大丈夫なんだろうか。
でも、大丈夫と言っているのにそれを疑ってさらにこの場で「本当に大丈夫なんですか?」なんて言ったら、それは僕がルーナさんの言葉を信用していないということになる。
それなら、とりあえずその言葉を信じることにしながら、ルーナさんの様子は常に気にしておくぐらいでちょうど良いだろう。
「それで……船上パーティーでたくさんの女性からのアプローチをどう乗り切るか、でしたよね」
「そうです」
ルーナさんの言葉によって、話が元の話に戻る。
船上パーティー、本当に厄介だ。
いくら色々な人と関わる機会と言っても、僕にはパーティーで遊んでる暇なんてない……しかも、たくさんの女性がアプローチしてくるなんて。
考えるだけで気が遠くなりそうだけど、僕はどうにかそれを乗り切るために思考を回さないといけない。
そう思っていると、ルーナさんがどこか歯切れの悪い口調で言った。
「その……アラン様は、現在そういったご関係の女性はいらっしゃるんですか?」
「居ないです」
僕が即答すると、ルーナさんは胸に手を置いて明るい声音で言う。
「そ、そうなのですね……!」
「はい……でも、だからこそ尚更女性の人はアプローチしてくるかもしれません」
「……」
僕がそう言うと、ルーナさんは考えた素振りを取ってから言った。
「……アラン様さえ良ければ、一つ良い策があります」
「なんですか!?」
「────私がアラン様のパートナーとして、そのパーティーに同席させていただくというものです」
ルーナさんが……僕のパートナー!?
「当然、これは今回のパーティーに限ったものなので、後の心配をする必要はありません」
……ルーナさんが普通の人だったなら他の人から見てその光景は違和感しかないかもしれないが、ルーナさんは大聖堂の神聖の位を持っている聖女様。
周りの人はどうして僕たちが一緒に居るのかについての理由はわからなかったとしても、そこに深く疑問を持つことはないだろう。
「僕としてはありがたい話ですけど、ルーナさんは良いんですか?」
「はい、一時的にでもアラン様のパートナーになれるのだとしたら、これほどに光栄なことはありません」
ルーナさんは笑顔で言った……そういうことなら。
「それでお願いします」
「わかりました……当日はよろしくお願いします、アラン様」
「はい……!よろしくお願いします!」
船上パーティーでたくさんの女性がアプローチしてくるかもしれないということへの対処はひとまず解決案が出たため、今日はルーナさんを船上パーティーに招き入れるための準備などをするためにも王城へと帰宅した────あの美人なルーナさんが、一時的にとはいえ僕のパートナー。
……そのことに、僕は少しだけ緊張感を抱いていた。
◇ルーナside◇
「まさか、このような機会を頂けるなんて……!一時的にとは言え、私がアラン様のパートナーに……!我が主はどこまで慈悲深いお方なのですか……!」
ルーナは、聖堂最前列の椅子よりもさらに前にある女神の像に手を合わせながら一人嬉しそうにそう呟いていた。
────が、その次の瞬間には目を暗くする。
「しかし、我が主に穢れた欲を持って触れようとするものが現れるかもしれないとは……アラン様に触れても良いのは、アラン様のことをこの世で一番崇め、一番愛している私だけ────あぁ、アラン様……本日も深く信仰し、深く愛しております……」
その後、ルーナはしばらくの間女神の像の前で手を合わせ続けた。
◇
更新時間が3分遅れてしまい申し訳ありません!
◇
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