ヤンデレ聖女様の信仰している神様が実は僕で、とても狂愛されている件
神月
第1話 聖女様
「……あなたが、この大聖堂の聖女様ですか?」
聖堂の最前列にある椅子のさらに前にある女神の像に向けて手を合わせて祈りを捧げていた、容姿の美しい黄金色の髪をした女性にそう声をかけると、その女性は僕の方に振り返った。
────すると、その綺麗な赤の目の中にあるピンク色の瞳孔を大きく開いて驚いた様子だった……僕の出自を知っているなら、それも無理はない。
驚いた様子の聖女様だったが、すぐに僕に向けて笑顔で微笑んだ。
「はい、私がこの大聖堂の聖女を務めさせていただいているルーナ・エルリエラと申します」
「僕は、この国の第三王子アラン・デーヴィットと言います」
王族として名乗ると、聖女様は少し微笑んだまま一度目を閉じて、再度目を開ける。
「存じております……本日はどのようなご用件でしょうか?」
「どんな悩み事や、苦悩していることでも聖女様に話せば解決、もしくは気が楽になると聞いて来ました」
「なるほど……話したいことはたくさんありますが、その前にお一つだけよろしいでしょうか?」
「はい、なんですか?」
僕がそう言うと、聖女様は僕との距離を近づけて来て僕の目を見ながら目を輝かせながら声を一段階さっきよりも高くして言う。
「アラン様が私のことを聖女様、などと敬意を持った呼び方をする必要はありません!どうぞ、私の名前を呼び捨てでお呼び下さい!」
「い、いえ!聖女様はすごい人だと聞いていますし、何より初対面の人に礼儀を持って接するのは当然のことだと思います……が、そういうことならルーナさんとお呼びさせていただきますね」
そう伝えると、ルーナさんは嬉しそうに言った。
「ありがとうございます!」
そして、僕と距離を近づけるのをやめると、口を開いて今度は落ち着いた声音で話し始めた。
「ですが、私はそれほどすごい存在ではありません……もし私がそのような存在だと周知されているのであれば、全ては私を救って下さった主のおかげです」
「……主というのは、ルーナさんが信仰している神様のことですか?」
「そうです……私は主に救っていただいたおかげで、人々の助けとなれています……なので、私の行ったことの全ては、私を救って下さった主のおかげなのです」
どうやら、その神に心の底から心酔しているみたいだ。
聖女様には位というものが存在し、その位というのは人々や聖堂などへの貢献度によって、その国の王族や貴族、民から下されるその聖女様への評判で決まる。
このルーナさんは、その中でも最高位の神聖という位をもらっている聖女様だ……それほどまでに貢献しているというのに、それを全て自分ではなく自分を救ってくれた主のおかげと言えるのは、本当にその神様のことを信仰しているんだということが伝わってくる。
「では、早速お話をお聞きしましょう……応接室に案内します」
「……応接室?こういうのは、だいたい懺悔室では無いんですか?」
「アラン様が懺悔することなど何もありません、不都合が無ければ応接室が良いと考えております」
「……わかりました、応接室でお願いします」
僕が懺悔することが無いと言うのは、僕が王族だからと遠慮してくれているんだろうか……だとしたらそんな遠慮はして欲しくないと思ったけど、とりあえず僕の中での優先事項はルーナさんに話を聞いてもらうことだったため、ルーナさんと一緒に大聖堂にある応接室へと入った。
応接室の中には振り子時計とソファと机があるだけで、とてもシンプルな部屋となっていた。
「どうぞ、ソファへお座りください」
「はい」
僕が言われた通りソファに座ると、ルーナさんは僕の前で膝を床につけた。
「……ルーナさん?」
「はい、どうかなさいましたか?」
「……少し話しづらいので、隣に座ってくれませんか?」
「私がアラン様のお隣に座らせていただくなんて、とてもではありませんが出来ません」
……やっぱり、僕が王族だからかなり遠慮、以上の配慮をしてくれているんだろうか。
「あの……僕が王族かどうかとかは気にしなくても良いので、話しやすさのためにも僕の隣に座っていただけませんか?」
「……本当に、よろしいのですか?私がアラン様のお隣に座らせていただいても」
「はい、お願いしたいです」
僕がそう伝えると、ルーナさんは手を合わせて声を震わせながら言った。
「あぁ……本日も、我が主は優しさに満ち溢れています……」
どうしてここで神様が出てくるのかわからなかったけど、その後で僕の隣に座ってくれたからひとまずそれで良しとしておこう。
────と思って、ようやく話し始めることができると思った僕だったけど、ルーナさんは突然立ち上がって言った。
「申し訳ありません!アラン様が来てくださったことに感激してしまい、お飲み物を用意するのを忘れてしまっていました!」
「飲み物……?良いですよ、そんなに長話するわけでは────」
「すぐにお淹れさせていただくので、しばらくお待ちください!」
僕の言葉を聞かずに、ルーナさんは応接室奥にある調理場まで行ってしまった。
……ここは聖堂の一室で、僕はルーナさんに話を聞いてもらう立場だから、そのペースはルーナさんに委ねることにしよう。
◇ルーナside◇
ルーナは、紅茶を淹れる用意をしながら頬を赤く染めて顔を恍惚とさせながら一人呟いていた。
「あぁ……主よ……!まさか、あなた様の方から来てくださるなんて……!やはり主は美しく、慈悲深いお方……願わくば、私の身と心の全てをあなたに捧げさせてください……」
ルーナはアランのことを崇めるべき存在と認識しているが、それと同時に自分の愛を直接伝え、アランからの愛も寵愛したいとも考えている。
今まではアランに愛を直接伝えることも、その愛を寵愛することも絵空事だった────が、ルーナはアランが自分のところへ来てくれたことを、自らの信仰が生んだ運命と感じずにはいられなかった。
信仰と愛情、決して交わってはいけないとわかっていたからこそ今までは押さえていた────ルーナは、もうそれも終わりだと強く決心した。
そして、ルーナはその後も独り言を呟きながら紅茶を淹れ終えると、すぐに紅茶の入ったカップを持ってアランの座っている応接室のソファへと戻った。
◇
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