厭な黒の青い史

電咲響子

厭な黒の青い史

△▼1△▼


 えー、リスナーさんから何度も来てたメッセージにね、「XXXX私の名前の黒歴史を語ってください」というものがあるんです。今回はそれ、やっていこうかなって。でもさ、普通に淡々と黒歴史をしゃべってもさ、しょーもないと思うんだよね。だから考えたんだ。


 音楽にしちまえばいいって。

 自分自身の黒歴史は歌にのせて紹介するのがベストじゃないかなって。


 だからやっちゃいました。作詞作曲、私。編曲も私。全部私。

 なんだかラップ調になっちゃったけれど…… そこはご愛敬。

 

 それでは聴いてください。

 我が新曲――『黒歴史』!


△▼2△▼


黒歴史? 黒歴史? 誰もが創り 誰もが抱え 思い出すたび のたうつそれ?

そんなん現在進行形で産み出し続けてるし だからなんだって感情いだいてるし


おい。やっぱ知りてえのか?

なら、教えてやっても無問題。


例えば、


自作の漫画を300巻以上描く! 製本はホッチキスで留めて!

読んでくれる友人は拍手喝采! ただひたすらに面映ゆい!


例えば、


プログラミングの授業でイキる! 同級生たちにイキる!

ブラインドタッチは当然! コードを事前に知っているから無敵無敵、ああ素敵!


例えば、


知人の綺麗な進行真似てみる! 怜悧に書けるものだと願う!

一体全体失敗失敗、大失敗! でもその知人に押し付け笑う!


例えば、


合作の結果を我が物とする! 相手が主で私が従でも我が物とする!

相手が近しい仲なのをいいことに! 好き放題やっちゃった叙事詩!


例えば、


△▼3△▼


人を殺しました。もちろん物理的には殺していません。つまり精神的に殺したということです。言葉はおそらく日本刀の如きものなのでしょう。悪意から防ぐこともできれば、悪意とともに斬り裂くこともできる。表裏一体の言葉は大切な存在を死へといざなう刃。明るく活発で晴れ晴れとした彼女。好天気には太陽と見まごうほどの親友に、些細で狭量な嫉妬心を抱えていたのかもしれません。そしてあの日あの時、彼女に巻き起こった惨劇。そう。まさしく死への呼び水。あの日あの時、彼女にかける言葉を間違えなければ。彼女にかける言葉を間違えなければ今も彼女は青春を謳歌し、私も彼女とともに人生を歩んでいたはず。そうだったはずなのに。なぜ。どうして。こうなったのか。…………………………………………。


△▼4△▼


 えー、リスナーさんから何度も来てたメッセージにね、「XXXX私の名前の黒歴史をもっと語ってください」というものがあったんです。今回はそれ、やりません。だってこの放送こそが黒歴史そのものだから。


<了>

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厭な黒の青い史 電咲響子 @kyokodenzaki

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