ザー〇〇大好き!

瘴気領域@漫画化決定!

ザー〇〇大好き!

 とうもろこしをとうもころしと言い間違えていたことはないだろうか。

 あるいは、ふんいきをふいいきでもいいし、アボカドをアボガドでもいい。なお後者については未だに言い間違えるが、まあそういう類の話であると思ってもらっていい。


 幼少のみぎりのことである。

 我が父の散歩についていくと、ラーメン屋さんに連れて行ってくれることがあった。幼き我が身にはラーメンとはごちそうであり、大人的な食べ物であった。丼一杯をひとりで完食できるととても誇らしく感じたものであったのである。


 父に連れられる店は、醤油ラーメン、塩ラーメン、味噌ラーメンというベーシック・オブ・ベーシックはあるものの、とんこつラーメンなんて流行りものはなかったように思う。あ、このへんはあの、時代とか地域とかあるんで、とんこつラーメンが昔からあった人はなんかこうそういうアレで読み替えていただけると。


 で、ラーメンってアップグレードがあるじゃないですか。普通のラーメンに対する大盛り、チャーシュー麺的なアレ。普通のラーメンを強化するだけでも恐れ多いのに、サイドメニューなんかつけちゃうとリッチ感が増すよね。ギョーザ、半チャーハン、チャーシューご飯、ネギチャーシューその他その他。


 で、子供の頃にね、好きだったのが、親父様が頼んだビールについてくる小皿のザーサイだったんですよ。あのコリコリした茶色のやつです。メンマの変異種みたいなやつ。あれ、お酒進みますよね。大人になってから中華料理屋で飲むときはだいたいマストで頼んじゃいます。


 んで、あのしゃくしゃくこりこりのザーサイなんですけど、幼き私は何をどう勘違いしていたのか、それを「ザー〇〇」って呼んでたみたいなんですね。たぶん、ザーサイとメンマがくっついちゃったんだと思うんですけど。


 なもんで、ラーメン屋で親父様がビールを頼むとですね、幼き私は言うわけですよ。連呼するわけですよ。


「お父さん! お父さんのザー〇〇ちょうだい! ザー〇〇ちょうだい! わぁい、ザー〇〇大好き! ザー〇〇おいしい!」


 ね。


 まあ、はい、そういう話です。


(了)

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