第12話


 カルロは瞬きを繰り返していた。アウサーと言う名で現れたカノンにも度肝を抜かれたが、まさか彼らが許可を下すとは思わなかった。さすがに民の不平を考慮した結果だろうか。どうせカラーシンガーと対戦したところで、勝利する訳もないとたかをくくっているのかもしれない。そうでなければ、あんな魔力の少ない、カラーシンガーになったところで、なんの意味もない少女にチャンスを与える訳がない。


 



 儀式を行うためなら、彼らは実の子どもまで捨て去る。昆虫のような、月並みな表現なら、血も涙もない人間たちだった。カルロは彼らを心底軽蔑していた。

 けれども。


(……なんだこの、面白い展開は)


 わくわくする。がんじがらめにくくられた、今まで何度も同じように行われていたものが、彼女一人の存在によってガラガラと崩れ去っていく。


(面白すぎるだろ!)


 このまま全部崩れ去ってくれたらいい。そうすれば自分も自由になる。わくわくした気持ちが止まらなかった。カルロは楽しくて楽しくてたまらなかった。ついでに言うと、隣に座る赤い男の動揺っぷりがたまらなく笑えた。


「……な、なんだ、どういう……! ありえない! クソッ、こんなもの認められないぞ、僕は今すぐ抗議に……! へぶっ!」

「落ちつけ」


 慌てて立ち上がったナギの目の前に、カルロはさっと両足を前に出してひっかけた。ナギの糸で手やら胴体はぐるぐる巻きにされている状況だが、幸いなことに両足ともどもの動きならば制限はされない。ナギが見事にひっかかり、強かに顔面を打ちつけた。冷静そのものの男が、こんなに動揺するとは……と面白さを通り越して、なんだか気味が悪くなってきた。カノンが試合場に顔を出した瞬間から、彼は気持ち悪いくらいにうろたえていたのだ。


 ナギは地面から顔を起こすと、ぼたぼた鼻血がこぼれていた。ええ、ちょっと、ウッソー、とカルロは多少ぎょっとしたのだが、水もしたたるいい男ならぬ、鼻血もしたたるいい男ということで、まあいいか。と頷いた。現に付き人のメイドが、「な、ナギさま!」と急いでハンカチを取り出し、彼の鼻にくっつける。真っ白で青い刺繍が美しく刻まれていたハンカチが、みるみるうちに真っ赤にそまる。


 ああー……もったいないー……とカルロはひとごとながらぼんやりその様を見つめていたのだが、メイドはというと、近くで拝見するナギの美麗なお顔に、ぽんやりと幸せそうに頬を染めているので、全然問題ないだろう。


「ちょ、いや、大丈夫だから、きみ。ハンカチが汚れるし」

「大丈夫です! 持って帰りますから! 家宝にさせていただきます!」


 家宝にしてどうする気だよ、とつっこんでやる優しさはカルロにはない。ナギはどうしたらいいか分からない表情をして、メイドになすがままにされていた。まぁ、自分の鼻血ハンカチを大切に保管されるだとか、誰でも意味がわからないとぽかんとなるに決まっている。


「悪いが僕は行くところがある、失礼する」

「いけません! 鼻血がまだ止まっていません!」

「垂れ流してでも問題ない」

「いけません、問題おおありです!」

「じゃあハンカチを貸してくれれば……というか、僕もハンカチを持っていているんだが!」

「それもいけません! これは私のお仕事です!」


 中々押しの強いメイドだ。というか、こんなチャンスを逃すまいと必死なのだろう。さすがの氷を胸に宿すナギ様も、女性を押しのけてまで進むことは罪悪感があるのだろう。「だから」「駄目です」「お願いどうして」「無理です」「ちょっともうマジで頼む」「鼻血が止まりませんね」お互い必死でもみ合いながらバタバタ暴れる彼らを横目に、カルロは試合場を見下ろした。黒髪の女性が、ゆっくりとステージに上がって行く姿が見える。


「ほらナギ、マリーの晴れ舞台なんだろ。ちゃんとしっかり、その目に刻んで……って、聞いてないし……」




 ***


。マリーベルと言います。お気軽にマリーとお呼びください」


 カノンの目の前に、優しげな表情をした黒髪の女性が頭を下げた。おそらくカノンよりも、いくらか年上だろう。手には金の時計を持っていて、それを飽満な胸に、きゅっと押しつけている。加護欲をかきたてるような、綺麗な女性だ。イーバムはとっくの昔にステージを去り、後はまかせた、期待してるぜ、と一言だけ言い残し去って行った。


「……お久しぶり、ですか?」


 申し訳ないが、目の前の女性との面識の記憶はまったくない。記憶力は悪くない方だし、これだけ美人ならば、印象深く残っているはずだ。マリーは「あら?」と口元に手を乗せて、


「ごめんなさい、間違えました。一方的に色音を通じて、あなたを。私は、あまり戦いは得意ではない方なのですが、ズルはあんまり好きじゃなりません。ですから、初めに申し上げておきますが、あなたの特技を知っています。色音を切るという、その稀有な才能。すばらしいと思います。けれども私、絶対に負けません。それがカラーシンガーですから。えっと……よろしくお願いしますね」


 マリーはもう一度、ぺこりと頭を下げた。カノンはぽかりと口を開けてしまった。聞きようによっては自意識過剰な台詞だが、マリーからは、そんな自信にあふれた雰囲気は感じられない。ただ事実を述べただけだ。ついでに言うと、カノンの十八番まで相手に知られてしまっている。

 どう考えたって、こちらの方が不利だった。けれども弱音なんか吐いてはいられない。うんと頷いて、こちらも「よろしく」と頭を下げる。未だに不満そうな顔をした審判が、予備の拡声器をサッと掲げた。


「試合、開始!」


 カノンはマリーから距離を置くように、バックステップを踏んだ。ばれているというのならば仕方がない。初めから準備万端に刀を向け、じっと睨む。あんまり女の人に乱暴はしたくない。けれども文句は言っていられない。


 マリーはほわほわと、ゆったりとした表情だった。戦いは得意じゃないと彼女は言っていたが、得意不得意と言うよりも、なんだか似合わない感じがする。そこらへんにいる女の人が、取りあえず大きな武器を持って、どうしたらいいんですか? と困ったように首を傾げている感じ。彼女は危なっかしい手つきで、手の中にある金時計を目の前に掲げた。ちくたくちくたく。秒針が進んでいる。「これは黄色い音、ですよ?」 ……なんで疑問形? とにかく彼女の媒体はアレなのだろう。


 一体何が起こるのか、とカノンが身構えた瞬間、それは現れた。大小種類も様々な、けれどもみんなそろって羽も嘴も、瞳も全てが黄色い、何度か見た覚えのある鳥たち。それが羽を使うこともなく、ピタリと空中で停止している。全ての鳥たちが、じっとカノンを見つめていた。ぶっちゃけ怖い。


 マリイイイイイイー!!!


 観客席で、野太い男の声が幾重にも重なって聞こえる。がんばれがんばれ。かわいいマリー! 頑張れマリー! そんな女、ぶっつぶせぇー! みんなそろって、ラブラブマリー! と叫んでいる。ちょっと……ええ……何この応援。どういうこと? カノンが戸惑いつつマリーを見ると、彼女は恥ずかしげに頬を染めた。ちょっと可愛かった。男たちの奇声が、勢いを増した。


「えっと、その……ふぁんくらぶ、というものらしくて……あんまり、気にしないでください」


 なるほど、マスコット的要素があるのだろう。こんなに綺麗なら仕方がないのかもしれない。戦いが苦手だと言っていた彼女が、カラーシンガーの昇格試験に登場したのも、集客効果を期待してのことか。まあ、そんなことを知ったところでしょうがないんだけど。


「鳥が宙に止まっている姿が、まるで時間まで止まっているようだと言われます。だから、私、時の色音使いと呼ばれることもあるんですが、ちょっと恥ずかしいですね。えっと、……そんな感じの色音です。私、あなたの弱点も分かってしまいました。だからごめんなさい、勝っちゃいますね。いきます!」


 彼女がもう一度金の時計を掲げた瞬間、鳥たちは止まっていた時間を刻みだすように体をぴくぴくと痙攣させ、小さな動きから、大きな動きへと変わって行き、ばさばさと羽ばたきを始める。三十の鳥たちを確認したところで数えるのをやめた。カノンはまずいな、と一人ごちる。マリーが言うように、どうやら自分の弱点はばれてしまっているらしい。


 まずは手始めに小さな雀が、しゃっとカノンの目の前をよぎる。素早いスピードだ。雀とは言えど、目に当たれば致命傷だ。刀をふり、雀の魔力を断ち切るが、今度は背後から。右から、左から、上から、下から。


(……きりがない……!)


 これが、自分の弱点だ。

 魔力を切るなど、所詮はただのビックリドッキリ奇襲作戦。種がばれてしまえば、それまでだ。対処は簡単。複数からの攻撃を与えればいいだけ。色音を分散させ、一部を切り落としたとしても、また次の色音がやってくる。刀を振りまわしているのは、ただの生身の人間で、腕はたった二本だけ。普通の力押しが駄目ならば、数で押してしまえばいい。マリーのそれは的確な判断だった。カノンが鳥の攻撃を間一髪で避けるたびに、(いや、多分ギリギリのラインで避けられる場所を攻撃しているんだろう)一歩一歩、場外に近づいて行く。


 このままじゃ押し切られる。けれども刀を振りまわすばかりでは、反対に隙を見せるだけだ。マリーは心底申し訳なさそうに、金の時計を両手で握っていた。ぱくぱくと動く口は、「降参してくださいませんか?」と言っているように見える。気の所為じゃないだろう。


 カノンは肩をすくめた。おそらく、彼女が本気を出せば、自分など一瞬で崩れ落ちるんだろう。彼女が優しいから自分は未だにこの場に立っている。それはチャンスでもあった。


 カノンは持っていた刀の鞘を放り投げた。何匹かの鳥にヒットし、鳥達は一瞬ひるむ。次にカノンは刀を投げた。ギラリと光る切っ先に、鳥たちはたまらず空間を開ける。まさか自分の武器を手放すとは思わなかったのだろう。マリーは驚き、真っ黒い瞳を大きく開けている。マリーの黄色い鳥達も、動きを止めた。カノンは未だとばかりに、腰から二本のベルと取り出した。


 いくら彼女が見ていたのだとしても、それはただ、カノンが刀を振りまわすシーンのみだろう。彼女だって、色音を使えるのだ。それは、カラーシンガーである彼らに比べると、小さな小さな、とても小さな力かもしれないが――――二色の色音を、扱えるのだ。


 ちりん、ちりん、とベルを連続で鳴らす。「青! 緑! 青! 緑! 青!」カノンのポケットから、小さな種がこぼれ落ちた。種はむくりと大きくなり、どこからか現れた水の滴がこぼれ落ちる。そしてその水で、植物は成長の勢いを増し、その植物にまた青の水が――――色音の相互作用。


 むくむくと育った何本もの木々の根が白いタイルを突き破り、緑の葉と枝がカノンの姿を隠す。おそらくこんなものを使える色音使いは片手に足りるほどだろう。なぜなら恐ろしく器用な手先と耳が必要だから。そして、こんなものの練習をするくらいなら、緑の色音一つを極めた方が楽だからだ。


 けれどもカノンは魔力が少ない。いくら一つの色音を極めたところで、限界は見えている。色音の相互作用を得ることで、やっと中級程度の力を有するのだ。これが、彼女の技だ。


「……ちょっとだけ、びっくりしました」


 マリーは優しげな眉を垂らした。けれども次の瞬間、瞳を吊り上げ「やっぱり、気を抜いてはいけませんね。ほんの少し、本気を出させていただきます!」マリーの意志をそっくりそのままくみ取り、見事な木々めがけて、前後左右どころか上も下まで包囲した形で、種々の鳥たちが、姿の見えないカノンめがけて滑空する。いくら木々の中に隠れていようとも、逃げ道がないくらいに囲んでしまえばこちらの勝ちだ。


 マリーはカチコチカチリと音のなる時計を握りしめた。彼女の黄色い色音がむんと周囲に湧き上がる。そのとき、鳥たちがくるくると次々に墜落する。何事だと目をむけば、彼らの翼が水にぬれている。


(そういえば、彼女は水の色音を使えるんだったわ……)


 鳥は羽に水がつくと、上手く飛べなくなる。


(けれどもその程度!)


 ほんの少しだけ羽が扱い辛くなるだけだ。マリーはもう一度、腹の底に力を入れた。気合を入れて、カノンを木からたたき落とし、そのまま場外に運ばなくては、と息を吐き出す。多少怪我をさせるかもしれないが、やむを得ない。けれどもなるべく、優しく、優しく――――


 マリーは、翼の扱い辛さに気を取られていた。マリーと鳥たちは、心の奥底でリンクしている。彼らは文字通りの鳥。たとえ色音でつくられようが、鳥としての習性は変わらない。だからこそ、マリーは大打撃を受けた。その印を見て、叫んだ。


「い、いやああああああああ!!!!!」


 頭を押さえて、ガクガクと体を震わせるマリー。審判が、観客たちが、何が起こったのかと目をむいた。マリーは体を丸め、頭に指を伸ばしおびえている。黄色い鳥達も、次々に転落していく。木の根っこがぼこぼこと突き破った白いタイルの上には、水たまりができ、さまざまな鳥たちがぶくぶくと溺れながら気を失っていた。


 そんな中、がさりと葉っぱの中から顔を出し、大きな紙を持ったカノンが、「あー……」と、どこか気まずげな顔をして体をのぞかせた。ひょいひょいと軽い動きで木から飛び降り、自分の投げ出した刀を回収して、印を描いた紙を、相変わらず目の前に突き出して。「びっくりするほど、効いちゃいましたね……」本人が一番驚いているのだろう。紙には二重の丸が黒い色で書かれている。ただそれだけだ。


「この、



 都会育ちのマリーは知らなかったかもしれない。けれどもこれは、カノンの田舎の畑ならば、カカシと一緒に飾られている、なんの変哲もない印だった。


 この間カルロから渡されたビラに、黒髪の可愛い女の子と、全身が不自然に黄色い鳥のイラストが描かれていた。なんとなく、それを見てひっかかったのだ。そう言えば、魔力の審査のときも、カノンが帝国軍に捕まったときも、不自然に黄色くて、人語を解す鳥がいなかっただろうか? カノンはそれを見たときに、色音でつくられた鳥なのだろうな、と思った。じゃあ、誰がつくったのか。カラーシンガーに違いない。もしかして、今度の昇級試験には、この黒髪の女性と、鳥たちが……?


 外道中の外道である。上級の色音使いは思いついたとしても絶対使わない。ブーイング間違いなしのひきょう者の一手である。もちろん、今現在も多くの観客たちが、「ひきょう者ー!」「マリーちゃんをいじめるなー!」「死んじまえー!!」という(主に男性客を中心とした)叫びが聞こえる。


 いやまあ、ここまで罵られると、いっそのことすがすがしい気持ちになって、カノンは堂々とマリーに近づいて行く。マリーは片手で額を押さえながら、ふらふらと体を起こした。

 タイルの上に突っ伏していた鳥たちは、黄色い一本の糸に変わるように、しゅるしゅると螺旋状に消えていく。その糸はマリーの手のひらの中に集まり、再び形をなそうとした。カノンの目にはよくわかる。巨大な―――三人くらいのカノンが手のひらを横に伸ばしても足りないくらいの巨大な―――鷹が苦しげに首を悶えさせ、叫んだ。


 カノンはその音の固まりを全身で受けながら、「おお」と一つ嘆息する。鋭く光る猛禽類の瞳に、ほんの少しだけ背筋が寒くなったが、カノンは刀を構えた。鷹はバサリと羽ばたく。その瞬間、バランスすらも崩しそうな強風がカノンを襲った。観客たちも、「ひぎゃあ!」と叫びながら、飛ばないようにと親たちは自身の子どもをしっかと抱き締めている。


「――――こいっ!」


 一対一のマンツーマン。これ以上ないくらいにまっすぐに。鷹とカノンはお互いとびかかる。カノンは勢いよく刀を振りまわし、魔力を切る。あまりの膨大な魔力に、手のひらがガクガクと震えた。


(これが、カラーシンガー!)


 鷹とカノンの刃が拮抗し、刀の切っ先を片手で添えながら、両足に力を入れる。マリーは未だに混乱している。だからこそ、この程度の威力に違いない。もし、初めから本気でかかられていたら、カノンは薄い紙きれのように吹き飛ばされていただろう。カノンははがみした。カラーシンガーと、自身の圧倒的な差を感じた。けれども。

 今、この場は。

 自分に有利に出来ている――――!


 彼女は勢いよく、刀を振り抜いた。瞬間、鷹は耳をつんざくような雄たけびを上げて、四散する。カノンは肩で息を落とした。ふと、あたりを見回した。会場はしんとして、先ほどまでカノンを罵っていた客でさえも、拳を向けたまま、声を発することを忘れてしまった生き物のように、ぽかんと顎をはずしていた。


 カノンは、一歩一歩マリーに近づく。ぴちゃり、ぴちゃりとカノンが作った水たまりの音がする。マリーはタイルの上にへたりこんだまま、カノンを見上げた。体中の色音を使い尽くしたのだ。彼女はぶるぶると首を振った。カノンは刀を、自身の後ろに置き、彼女の前にしゃがむ。幸いなことに、カノンとマリーの体型は同じくらいだ。胸の分を除けば。


「その、あまり女性に乱暴はしたくありませんから……」

「え? え、ええっ……!」


 よっこいせ、とカノンはマリーを担ぎあげた。おおっ!? と一瞬観客たちの声が響く。

 重くはないと言ったらウソになるけど、刀だって結構重いのだ。そこいらの女性よりも、よっぽど力がある自信はある。マリーは体に力が入らないのだろう。「え? え? や、え、あ、そんな!」と空しく頭をふらふらとさせて、カノンに米俵のように担がれている。


 カノンは一歩一歩踏みしめながら場外に向かって歩いて行き、白いタイルが途切れた場所で、ゆっくりとマリーを肩からおろした。しんとしている。マリーはぽかんとカノンを見上げていた。そのままカノンも彼女を見つめて暫く待ったけれど、いつまで経っても反応がない。しびれを切らして審判に目を向けた。


「これ、場外じゃないですか?」

「……あ、ああ……!」


 やっとこさ時間が戻って来たらしい。審判は拡声器を口にして、けれども戸惑うように首を傾げて、もう一度掲げて、信じられないと言った風に首を振り、覚悟をしたように唾を飲み込んだ。


「勝負、アリ! 勝者はその……乱入者、カノン!」


 う、うわああああああ!!!

 堰を切ったような叫び声が観客席で上がる。マリーちゃんがぁ! という嘆きの声や、そんなまさか! という驚きの声。俺、アウサーに賭けてたんだけど、どうなるの!? という賭けの結果を叫ぶもの。さまざまな声が入り混じりながら、カラーシンガー昇級試験は幕を閉じた。

 カノンは大きく息をついた。やっとここまで来た。やっと。


「……ナギ……」


 見てくれているだろうか。自分は彼に、近づけただろうか。






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