第15話 三人の幽霊達①

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 悠宇ゆうと健太郎――ユウとオバケンが丘の上のお屋敷に到着した頃、お松、べーやん、ザエモンもまた、彼らの数メートル後ろをふよふよと漂いながら、やっとユウにも人間の友達が出来そうだなどとひそひそと会話をしていた。そんな話の合間に、ふと屋敷の二階に視線をやったお松が、おや、と眉をしかめる。


「なぁ、べーやんにザエモン。あれはレイじゃないかい?」


 お松がひと際声を潜めて二人に言った。


「ええ? 言われてみりゃァよく似てますが……。いや、松代のアネゴ、レイは男ですぜ」

「左様。他人の空似ではござらんか?」


 べーやんとザエモンがそろって顔を突き合わせ、首を傾げる。それを見て、お松は、ハァッと大袈裟にため息をついた。


「まったく、男共の目は節穴なのかねぇ。レイはどこからどう見たって女の子だろ。どうして気付かなかったんだい?」

「えぇっ?! 女ァ?! 逆にどうして松代のアネゴはわかったんです?」

「うむ。その方が不思議でござる!」

「まったく、男共はこれだから。いや、そんなことより、レイだよ、レイ。ここ数週間、とんと姿を見せなかったレイだ」


 どうする? と少々どすの利いた声でお松が二人に問う。


「どうする、ってェ言いますと……?」


 べーやんが、ごく、と喉を鳴らす。


「よもや、ユウ殿を悲しませた罰を与えるつもりでござるか? 相手は子どもでござ――ぁいたァ!」


 腰に下げた刀にそっと触れ、物騒なことを言い出したザエモンを、「お馬鹿!」とぽかりと殴る。


「罰なんか与えるわけがないだろ?! どうして急に来なくなったのか理由が知りたくないか、ってぇ話だよ。レイが自分の意思で来なくなったんなら仕方ないけど、何か事情があるかもしれないじゃないか。だからあたしがちょいと聞いてくるよ。こういうのは女同士の方が良いもんだ。ユウには適当にごまかしといておくれな」

「わっかりやしたァ!」

「うむ。そういうことならば承知つかまつった」


 じゃ、ちょいと行ってくるよ。


 そう言って、お松はこっそりと屋敷の中へ入っていった。

 

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