九、姜詩 

舎側甘泉出 一朝雙鯉魚

子能知事母 婦更孝於姑


舎側しやそく甘泉かんせん出づ 一朝いつてう 雙鯉魚さうりぎよ

く母につかふるを知り 婦さらに姑に孝あり


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 姜詩きょうし阿母はは慈烏反哺じうはんぽの心を尽くした人であった。時ぞとも無く阿母ははの慾するは、かわの水で喉を潤したい、又、生魚なまいをなますを食べたいと云うことであった。そこで姜詩きょうし吾嬬あづまをして六、七里の道を隔てしかわにまで水をみにらせ、又、いをなますこしらえて与え、伉儷ふうふして常に善くつかえたことであった。

 或る時、姜詩きょうし茅舎いえかたわらに、忽然こつねんおがわの如くうま閲水みずの湧きで、晨晨あさなあさなその粼粼りんりんたる水中みななかには鯉の魚影が在った。そこで是を漁撈すくいとって阿母あぼに供したのである。

 斯様かようしきことは、ひとえ姜詩きょうし伉儷ふうふの孝行に天道がこころうごかされてお与えになったものであろう。

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〔私訳〕二十四孝(御伽草子) 工藤行人 @k-yukito

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