八、老萊子 

戯舞學嬌癡 春風動綵衣

雙親開口笑 喜色滿庭闈


戯舞けぶ嬌癡けうちを學ぶ 春風綵衣さいいうごかす 

雙親さうしん口をひらきて笑ふ 喜色庭闈ていゐに滿つ


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 老萊子ろうらいし父母ぶもに善く仕えた孝子こうこうものであった。れば彼はよわい七十にして、身にいつくしき繚綾りょうりょうを着けて飾り、稚幼ちいさき者の如くに扮装よそおってあざれ舞い、又、親の御辺ごへんはべって雑事ぞうじを務めんと云いつつわざ蹴躓けつまづいてまろび、幼児おさなごのようにいたという。

 この深意には、古稀ともなれば寄る年波としなみ見目容貌みめかたちの麗しからず、さぞかしこの醜容にくさげ父母かぞいろはのご覧になれば、子とて老闌おいたけてゆくを悲しくお思いになるであろうことをうれい、そして又、双親ふたおやにも我等とて老倒おいぼれてしまったと思われぬようにと、斯様かよう挙措ふるまったということである。

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