五、閔子騫 

閔氏有賢郎 何曾怨晩娘

尊前留母在 三子免風霜


閔氏びんし賢郎けんらう有り 何ぞかつ晩娘ばんぢやうを怨みん 

尊前ちちのまえに母をとどめて在り 三子さんし風霜ふうさうまぬか


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 閔子騫びんしけんいわけなくして母をうしなうた。父は後妻うわなりを迎えて二人の子を儲けた。此の後妻うわなりは、吾子あこを深くいつくしんで前妻こなみの子をく思わず、冬月とうげつの寒きにも綿入れでなしにあしの穂を入れた粗末な布子ぬのこを着せるので、身の寒きに凍える息子を見兼ねた父が離縁らんとすると、子騫しけんは「継母上ははうえ離縁られては、子は三人みたり、寒き思いを致しましょう。今、このかみ小生われ一人が寒さをこらえれば、おとと二人は暖かくしていられるのです」と云って父を諫めたため、これを聴いて感悟こころうごかされた継母ままはは向後きょうこう、隔てなく継子ままこにも慈愛いつくしみを注いでまことの母のようになったという。

 只々、人の好悪すきずきは自らの心次第であると古人いにしえびとの申すようも道理であると存ずる。

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