四 孟宗 字恭武或子恭

泪滴朔風寒 蕭々竹數竿

須臾春笋出 天意報平安


なんだしただつ朔風さくふう寒し 蕭々せうせうたる竹數竿たけすがん 

須臾しゆゆにして春笋しゆんしゆん出づ 天意平安をはう


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 孟宗もうそういとけな年端としはで父に永別し、独りとなった寡婦やもめの母を養っていた。その母も潦倒おいおとろえると痼疾ながわずらいに悩まされ、飲食おんじき嗜好このみも度毎に変わったので、時には難儀なものを望んだ。

 或る時、母は冬だのにたけのこが食べたいと云った。直ぐさま孟宗もうそうは竹林に行ってこれを覓索まぎもとめるも、雪深き折なれば如何どうしてやすく得ること出来ようか。唯々ただただ、天道の御慈悲におすがり申し上げますると至祷しとうし、事の侭ならぬを大きに悲んで竹にもたれ掛かっていると、にわかに大地はひらけて数多のたけのこが次々と地表に顔を出した。孟宗もうそう悦懌おおいによろこんで直ぐに是を採り、帰蓽いえにかえってすいものにして供すると、口にした母はそのまま病怠やまいおこたって寿命を延ばしたという。是もひとえに、孝心の深さに感応かんのうせる天道よりのご恵与だったのである。

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