第2話 time of comeback


「ねぇ、キョン」

 また使い古されたワードだな。

「なんか言った?」

「いいや、なにも」

 だいたいこの言葉が出たら、ろくでもないイベントの始まりだ。俺や朝比奈さん、長門に古泉属するSOS団が巻き込まれていく流れだ。

「私ね、超古代の遺産ってやつに興味が出て来たのよ!」

 似たような話があったような。

「なんか言った?」

「言ってません、それでその亀型怪獣を復活させそうななんやらがどうしたって?」

「亀? まあいいわ、とにかく今度のSOS団の活動は遺産探しにしようと思ってるのよ!」

 遺産探しと言うとまるで死にかけの老人を探して結婚か養子にでもなって、それをふんだくろうという計画に聞こえなくもない。

「探すって言ったって、近くにそれらしき遺跡やらはないが?」

 仮にあったとしても立ち入り禁止か、保護されて個人が勝手に発掘など出来ないだろう。

「ふふーん、甘いわねキョン。何も遺産は遺跡にだけあるとは限らない! コンクリートの下にだって埋まってるかもしれないのよ!」

 お前はコンクリートを割るつもりなのか。

「そんな野蛮な事しないわよ」

 じゃあなんだコンクリートをすり抜けて取り出そうとでもいうのか、その遺産とやらを。

「バッカねぇ、キョン、もっと想像力を働かせなさい! 元々割れ目の入ったコンクリートがあるのよ」

 じゃあ最初からそう言え。とは口に出さないでおく。

 しかし割れ目の入ったコンクリートに遺産?

 ハルヒのヤツ、ずいぶんと詳しい情報をすでに持っている。

「おいハルヒ、お前、どこでそんな情報手に入れた?」

「え? 近所のガキンチョがウワサしてたのよ『二丁目の割れ目にはお宝が埋まってる!』って」

 まさかガキの妄言を鵜呑みにしたってのか!?

「そうよ悪い、だいたいね、そういう噂を馬鹿にしたもんじゃないわ。大人じゃ見えない子供ならではの視点っていうのが――」

 その後、長々と、子供ならではの視点の意外な重要性について語られたが見事に俺の耳を通り抜けていった。


 そして結論に行こう、事の顛末を話そう。


 お宝というのはタイムカプセルの事だった。

 終わってみれば何ともあっけない。

 コンクリート舗装される前に埋められ忘れ去られたタイムカプセル。

 大昔前の特撮ヒーローのオモチャだとか、もうボロボロになって読めない未来、つまり今への手紙だとかが入っていた。

 この感じだと埋めた人間は、もう結構な歳だろう。

「どうしようかしらこれ、持ち主を探すにしても手掛かりになるものがないわ」

 ハルヒはなんとか持ち主に渡してやりたそうにしていたが、言っている通り、名前など書いてある物は無い、というか多分、時間経過で消えてしまったのだ。

「また埋め直しておこう、それ以外ない」

「……そうね」

 タイムカプセルとコンクリートの割れ目の土を綺麗に元の場所に戻し、今回のSOS団の活動は終了した。

 ハルヒは少しがっかりした様子だったが、どこか満足気でもあった。

「私達も埋めましょうかタイムカプセル」

「良いですね~、私も埋めてみたいです」

 朝比奈さんがハルヒの言に賛同する。

「良いと思いますよ。SOS団でタイムカプセル」

 古泉も乗っかってくる。

 長門は無言で首肯する。

 果たしてそのタイムカプセルは朝比奈さんの未来にまで届くのか。

 そんな事を思いながら、とりあえずは埋める場所から決める事にする。

 コンクリートで舗装されないような場所を探さねば。

 鶴屋さんがまた裏山を貸してはくれないだろうか。

 ハルヒはノリノリで何をタイムカプセルに入れようか考えていた。

 俺はそれに黙ってついていく。

 

 俺は……そうだな、確かまだ捨ててなかった子供の頃買ったソフビ人形があった気がする、

 先駆者に習って特撮ヒーローモノといこう。

 そう決めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

涼宮ハルヒの安寧 亜未田久志 @abky-6102

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ