第47話

夜会二日目。

昨日は予想外のハプニングがあったものの、例の王太子殿下廃嫡計画に伴う動きはなかったらしい。

そのため、今日はライオネル様の王弟公表と継承権放棄の宣言が行われる予定になっている。


王太子殿下の婚約や南の国との同盟成立は夜会開始直後に発表されたけど、今回は夜会の終盤で発表するらしい。

最初から発表してしまうと、王家の隠された秘密が明かされたことで夜会どころではなくなる可能性があるからだ。


今日も一曲だけダンスを踊った後、ライオネル様と話したそうな貴族たちがいたので少し離れることにした。

昨日のことがあったので、ライオネル様からは絶対に側を離れないという意思を感じたけど、ローズ様がまた声を掛けてくれたので少し話をするといって離れた。


ローズ様もライオネル様が渋る様子から、「そこの椅子に座ってお話しますわ」と見える場所にある椅子を指して、近くにいますよアピールをしてくださったので、渋々という感じだった。


「ふふふ。マリアベル様は愛されていらっしゃるのですね」

「恥ずかしいですわ」

「父から聞きましたが、あんなことがあったばかりですもの。当然ですわ。ご無事だったと聞いて安心いたしました。けれど、心労が溜まっておいでではないかと心配です」

「痛み入りますわ。けれど、大丈夫です」


そこに飲み物を持った給仕が通りかかったので声を掛ける。


「マリアベル様、お飲み物をお取りしましょう」

「えぇ。ありがとう」


給仕が盆に載っている飲み物の種類をワイン、りんごの果実酒、ベリーの果実水であると説明してくれる。


「マリアベル様は何がよろしいでしょうか?」

「では果実水を」


給仕から飲み物を受け取ったローズ様が、私にグラスを差し出しながら笑う。


「ふふふ。万が一にもお酒を飲ませたら、わたくしが辺境伯様に怒られてしまいそうですわね」

「そんなことはないと思うけれど、どうかしら」


ライオネル様と食事中にお酒を飲むことはあったけど、私はせいぜい一杯程度しか飲まない。

今度、ライオネル様と二人でゆっくりお酒を飲んでみるのも良いかもしれない。

ついつい、そんな想像をしてしまう。


ローズ様と和やかに笑いながらグラスに口を付ける。

ダンス後で喉が渇いていたため、一気に半分ほど飲んでしまった。


(…………?)


「どうかされましたか?」

「いいえ、なんでもありませんわ」

「よければ辺境でのお話を聞かせてくださいませ」

「ええ。えっと、そうね……」


(…………やっぱり、なんだか息苦しい、気がする、わ)


「マリアベル様?」


「………………」


胸が苦しくなり、手からグラスが落ちる。

パリンと薄いグラスが割れた音が周囲に響いた。

そして、体に力が入らなくなり、ぐらりと前に倒れる。


「マリアベル様!?誰か!だれ……くっ」


咄嗟に支えたローズが周囲に助けを求める声が響いたが、そのローズも膝から崩れて共に倒れ込んだ。

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