まんまるお月さまとイガイガお星さま
日乃本 出(ひのもと いずる)
まんまるお月さまとイガイガお星さま
よるのお空にうかぶ、まんまるお月さま。
とってもきれいで、やさしいやさしいまんまるお月さま。
だけどもちかごろ、なんだか元気がなさそうにしているよ。
よるのお空にいっぱいうかんでいる、イガイガお星さま。
いつもいつも楽しそうに、キラキラ光りながらおしゃべりをしているイガイガお星さまたち。
そんなイガイガお星さまたちをみて、まんまるお月さまはなんだかとってもさびしそう。
すると、イガイガお星さまの一人が、まんまるお月さまに話しかけました。
「お月さま。お月さま。どうして、そんなにさびしそうなの?」
すると、まんまるお月さまは言いました。
「わたしは、みんなとちがってまんまるで、イガイガじゃないわ。だから、なかま外れのようですごくさびしいの。わたしも、みんなとおなじ、イガイガお星さまになりたいわ」
それを聞いたイガイガお星さまはおおあわて。いそいで他のイガイガお星さまのところへ行ってみんなをつれてきて、まんまるお月さまに言いました。
「お月さま。お月さま。そんなこと言わないで。お月さまは、お月さまにしかできないことがあるんですよ」
「あら、わたしにしかできないことってなにかしら?」
「お月さまは、夜のお空をあかるく照らしてくれています。それは、ぼくたちにはできません。お月さまがいなければ、夜のお空は、まっくらでなにも見えなくなってしまいます」
イガイガお星さまたちからそう言われ、まんまるお月さまは、からだをほんのりとあかるく光らせてはずかしがりました。
「そう言われると、うれしいわ。でも……」
だけどすぐに、まんまるお月さまはさびしそうになって、言いました。
「でも、まんまるなのはわたしだけ。わたしも、みんなといっしょになりたいわ。一人はとってもさびしいの。わたしも、イガイガお星さまになりたいわ」
すると、イガイガお星さまたちは、声をそろえて言いました。
「ぼくたちも、お月さまのようになりたいよ! でも、ぼくたちはお月さまにはなれないんだ! お月さまは一人だけ! とってもとってもすてきなお月さま! お月さまは、ぼくたちみんなのあこがれなんだ! お月さま! お月さま! みんなが大好きなお月さま! 一人だけ、特別でかけがえのないお月さま! さびしくさせちゃってごめんなさい! これからは、ぼくたちはお月さまといっしょにおしゃべりするよ! だから、元気を出して、お月さま!」
イガイガお星さまたちから言われて、まんまるお月さまはとってもうれしくなりました。
わたしは、ずっと一人だとおもってた。
わたしは、ずっとなかま外れだとおもってた。
わたしは、みんなとちがうことがいやだった。
でも、違うのね。
わたしは、一人なんかじゃなかったわ。
わたしは、みんなとちがうから、わたしはわたしだから、ステキなことなのね。
夜のお空にうかぶ、まんまるお月さまと、イガイガお星さまたち。
今日は、いつもよりも、うんと明るくやさしく光っている、まんまるお月さま。
イガイガお星さまたちも、まんまるお月さまのおそばで、いつもよりもキラキラときらめいています。
これからは、まんまるお月さまがさびしそうになることはきっとないよ。
まんまるお月さまとイガイガお星さま 日乃本 出(ひのもと いずる) @kitakusuo
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