遊び人の俺がアカデミーに

のり塩

プロローグ

「気が抜けとる!遊びにうつつを抜かしておるからだ、たわけが。そこで瞑想でもして心を入れ替えておけ」

 痛ってぇ。舐めて掛かったけどあのジジイ、寸止め甘くしやがって。今どき素面、素籠手で木刀の指南とかほぼ虐待だろ。江戸時代からの道場だからって稽古も昔の仕様にしなくていいのに。


 あーまだ身体痛てぇ。瞑想とかしても、雑念ばっかだしタバコ吸いたいし。あのジジイ次はシバいたろ。


「レオ、今いいか?大切な話がある」

「かしこまって何だよ、親父。俺が遊び歩いてること?それか高校に行かないこと?」

 ひっさしぶりに親父が神妙な顔して話しかけてきた。いやー何の話だろう、進路とか将来のことか?それか酒タバコ賭け麻雀に喧嘩、どれもこれも心当たりがあるんだけど。


「お父さんはレオにはお前の好きな様に生きて欲しいと思っているんだ。でもな今のまま投げやりに生きていても取り返しのつかないことになるんじゃないかと心配してるんだ」

「はい」っとぶっきらぼうに返事をする。う、ガチで真面目な話やん。


「高校はどうして行かないんだ?学業に追い付けないという訳ではないだろう」

「なんでって言われると難しいんだけど…」

 行きたくないっていうか、勉強には興味無いし学校自体退屈だし。高校には面白い人も居ないから行く意味無いんだよな。


「めっちゃ端折って言ったら退屈で行く意味ないからかな」

「お前は俺の息子だし言いたいことはよく分かる。それならレオは見たことのない面白い学校なら行く気はあるって事だな?」

「うん?なんかよくわかんないけど、別に勉強したい訳じゃないんだけど。面白いなら行く気はある」


 何言ってんのかわかんないけど、そんな高校ないやろ。もしかして勉強して大学行けってことか?それはちょっと面倒なんだけど。

「なら、お前を俺の母校でもある王立へカースト騎士学園に入学の手続きをしてやる。アンネから詳しい話は聞いてくれ」

「親父、何意味わからんこと言ってんの?」

「あっちは魅力的なものも多いし、好奇心旺盛なお前なら楽しくやっていける。暫しのお別れだけど寂しがるなよ」


 親父は笑ってるけど、何が暫しの別れだ、まだ若いのにもうボケたのか?

「おい親父、なに馬鹿なこと言ってんの?」

「まあ楽しくやれよ、じゃあな」


 リビングにいた俺の足元が光り始めた。そして直ぐに眩しい光に身体を包まれた。バカ眩しい、あの親父何しやがった。


 いや、ここどこだよ。目を開けたら質素なリビングから変わって天井が高く豪華なカーペットやカーテンに彩られた部屋に変わった。


 目を丸くしている俺を見兼ねて黙って立っていたメイドが話し始めた。

「レオ様、お待ちしておりました。王立へカースト騎士学園の入学まで身の回りのお世話をさせていただきます、アンネです」

「あ、うん。なんかよろしく」


 さっき親父が言ってた単語が聞こえて来たけど、なんもわからん。

「まずここどこって感じだし、騎士学園ってなにって所から教えて欲しいんだけど」

「ここはシュタール王宮です、レオ様からすれば異世界ということになりますね。へカースト騎士学園は武術や魔法などの分野で優秀且つ素質のある者を集め人材を育成する場です。卒業後は国の騎士団や宮廷魔道士などに就くこと────」


 つまり俺は親父に異世界に飛ばされて、騎士学園っていうエリート養成学校に入学する事になってると。武術に魔法ねぇ、武術は剣術でなんとかなるかもしれんけど魔法なんて知らんぞ。


「俺の親父は何者?この世界の住民だったって事は何となくわかったんだけど」

「この手紙を渡してくれと申し使っております、こちらどうぞ」


 えーっとなになに『俺達の一族は幕末に地球に移住した異世界人でな、最近退屈そうに遊び歩いてるお前を見兼ねて俺の母校に入学させる事にした。その学校なら楽しくやれるはずだ。騎士学園では好き勝手やってくれて構わない、ただそんなに甘い所じゃないと忠告だけしておく。』


 うーんこの、なんて言うかこのクソ親父色々すごいこと隠してやがった。俺は異世界人ってことか。それで…


『その世界には魔法があるし、腕っぷしである程度決まってくる面白い世界だ。あとレオには言ってなかったが、俺は結構すごい魔法士でな、そのシュタール王国のお姫様と駆け落ちして生まれたのがお前ってことだ。母さんはもうこの世にいないけど元気にやっていけることを願っている。愛しの息子へ。

追記 酒とタバコは程々にしなさい』


 この親父何してんだ?この親父結構大胆なことしてやがるんだな。確かに俺の母親は聞いても濁されてたし、親戚付き合いとかないし変だとは思ってた。


 まあよくよく考えたら小さい事から道場で剣振ってたし、魔法とか腕っぷしがものをいう世界なら結構おもろそうだよな。魔法っていう響きは男心擽るワードだしな。


「うーんわかった、面白そうだしこれからよろしく頼むよ」

「はい、あの人の息子様というだけあってレオ様はかなり自由な人の様ですね」

「クソ親父と一緒にされるのは癪だけど、まあ遊び人とか呼ばれてたけどさ」

 色んなとこほっつき歩いてたからつけられたあだ名だけどな。


「おもしろい人ですね。入学は1ヶ月後になります。お父様から魔法の事を学んだり身体を鍛えろと申し受けていますので、こちらに魔法書と明日から近衛騎士と訓練を予定しています」

「はいよ、好き勝手していいらしいし楽しくやらせてもらうよ」

「それではこれからよろしくお願いします」


 そう言って綺麗なメイドは深々とお辞儀をした。さて俺はこれから自由に学園生活を送るれるのか?全然イメージできないけど楽しみだな。色々よくわかんねえことばっかだけど、とりあえず異世界を満喫しよう。


 うん、とりあえずタバコだな。ベランダに出てタバコに火を着ける。そこからは夜の宮廷の石造りの広場や壮観な街並みが目に入った。まじで異世界なんだな。


 あーあの親父なにしてんだろうな。色々考えながらベットに飛び込むとそのまま寝てしまった。

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遊び人の俺がアカデミーに のり塩 @tanoshin0205

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