第12話 サマーキャンプ (小4)

僕らの小学校では、毎年夏休みにサマーキャンプというイベントがあった。


夏休みに、学校のグラウンドにテントを張り、1泊するというイベントだ。


年に1回行われる行事で、毎年約60人ほどが参加する。


小学校6年間で必ず1回は参加しろと言われていた。



サマーキャンプでは、4人班を作って行動する。


5、6年生が班長となり1〜4年生を3人ほど面倒見るのだ。



1年生〜6年生の間に1回は参加しないといけない。では、何年生の時に参加するのが正解か、当時4年生だった僕は考えた。


1〜2年生の時は心細くて参加できなかった。3年生の時も面倒で参加しなかった。

今は4年生だ。来年からは、5年生なので参加したら班長をやらなければならない。


ということは、今、4年生の時に参加するべきだ!


との結論に至り、4年生の時に参加することにした。



(キャンプ当日)


「班長は焚き火の説明をするので集まってください」


校内アナウンスを聞き、集合場所に向かう。


なぜか僕は4年生なのに班長をやらされていた。どうしてこうなった。


(回想)

「いやー、今年は5、6年生の参加者が少なくてね。4年生からも1人班長を選ばないといけなかったから、マサくんを選んだよ。マサくんならしっかりしてて任せられるからね」


キャンプが始まる前の学校での説明会のとき、担任にそう言われたのだ。


まあ、ちょっと嬉しかったのだが、ちゃんと班長が務まるか心配だ。


焚き火の注意事項を聞き、種火をもらう。


種火を持って自分の班員が集まっている焚き火場所に向かった。


「火!これ火ついてる?」

「はんごーはんごー、ごはん!はんごー!」

「米と野菜もらってきました!」


班員が出迎えてくれる。


僕の班は、僕(小4)、なおくん(小3)、チビA(小2)、チビB(小1)とバランスのいい4人だ。


なおくんは割としっかりしており、率先して手伝ってくれる。ちょっとイタズラ好きで、僕にちょっかいをかけてくることもあるが、チビ2人も一緒になってちょっかいをかけてくるので、逆にまとまりが出ていい感じだ。


「早くカレー作りたい!」

「まずはご飯炊くのが先だよ」

「はんごー!おこげ作る!」


夕飯のメニューはカレーだ。

13時過ぎにグラウンドに集まってテントを立てたあと、ちょっと早いがご飯作りをスタートした。この後は、お風呂代わりのプールと、校舎内での肝試しが待っている。


料理に戻ろう。


まずは米の準備からだ。


水道にいき、米をみんなで代わりばんこに研ぐ。


そのあと飯盒に水と一緒にいれ、先生が管理している焚き火に持っていく。


米は先生がまとめて焚き、カレーは生徒たちが各自で作るのだ。



次はカレーだ。


班ごとに一つ焚き火を用意して、鍋を温めていく。


野菜はあらかじめ切ってあったので、鍋に投入していく。

あとは水を入れて煮込むだけだ。


だが、火は自分たちで維持しないといけない。

これが結構難しかった。


ふー、ふー


竹筒を使い、みんなで順番に焚き火に息を吹き込む。


だが、なかなか火加減が強くならない。


「チビ2人、何か燃えそうなもの探してきて!」

「わかった!」


元気よく飛び出していき、木の枝と新聞紙を持ってきてくれた。


新聞紙はよく燃えた。だが、一瞬で燃え尽きてしまう。


燃えカスが風に舞って目が痛い。


木の枝は水分が残っていたのか全然燃えなかった。


さらに燃えずに残った枝が密集して空気の通りを悪くするという悪循環。


見かねた先生が、入れすぎた木の枝などを抜き取り、新しい薪を追加してくれたことで火が安定した。



なんやかんやでカレーは完成し、先生が炊いた米も受け取った。


しっかりおこげもできており、みんな満足してカレーを食べたのだった。



その後、プールで泳ぎ、肝試しをし、夜は花火をして星を見てからテントで寝た。



今でも覚えている良い思い出だ。



翌朝は、起きてすぐ解散の時間になった。


チビ2人はすごい楽しかったようで、帰りたくないと泣いてくれた。


なおくんも僕に懐いてくれたので、別れを惜しんでくれた。


なおくんがチビ2人の面倒を見てくれたので、すごい助かった。


「なおくんもありがとな」と言葉を交わし、僕は自転車に乗り颯爽と帰宅した。




後日談


夏休みの後も、なおくんには廊下で見かける度に声をかけた。


いつもステューシーの服を着ていたので、「今日もステューシー着てんじゃん」とか、「よう、ステューシー」とか言ってかわいがった。小学生だからあだ名が横文字なだけで笑ってくれた。


僕が中学2年の時、部活の後輩としてなおくんが入ってきた。


「お久しぶりです、先輩!」


と声をかけて来てくれたが、僕はその時コミュ障の陰キャになっていたので、気の利いた返しができなかった。


その後も何回も話しかけてきてくれたが、毎回ゴニョゴニョと答え、なんか気まずい関係になってしまった。


多分、なおくんは小学生の時、僕のことをかっこいい先輩として見てくれてたんだと思う。だが、僕は中学ではダメダメになってしまっていたのであった。


「ねえ、なおちゃん。なんであの先輩に絡んでるの?」

「あの人すごい人なんだよ」

「えー、そうかなあ」


そんな会話を聞いたことがある。


先輩、昔はかっこよかったのに…という心の声が聞こえてくる気がした。

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新卒1年目の社会人が人生を振り返る〜幼稚園児から社会人になるまで〜 @nanakamado888

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