第4話



 夜の十時ごろ、シーンと静まり返った中庭で、人の話し声がかすかに聞こえて来た。

 鍵野井は井戸の中に顔をうずめて耳を澄ました。

 比較的若者の声だった。さすがに何を言っているのかは分からないが、ときおり笑い声が起こる。それも狂ったような高い声だ。ちょっと異様な雰囲気で、とても瞑想を行っているとは思えない。

 久々に心が躍った鍵野井は、兜川に向かって、

「今日はこれで帰ります。明日は瞑想道場に入るための準備をして、明後日再びここに来ます」

「そうかね。じゃあそのとき先生にお金をお渡ししよう」



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