新型テロリスト・ミラー五郎
狐付き
ミラー五郎の最後
「本当に内部の犯行なんですか?」
「ああ。そして犯人の目星もついた」
ミラー五郎というか、テロ対策本部を立ち上げ、そこを担当するようになり、ようやく犯人に手が届いた。
しかし本当に……いや、それ以上言うまい。
「それで、誰が犯人なんですか?」
「それはな……お前だよ、警視」
「へ?」
こいつには疑わしい点が少なかった。キョンシーを知らなかったり、意図がよくわかっていなかったり。だが、最も疑わしいやつはこいつしかいない。
「な、なにを根拠にそんな────」
「それも演技か? アカデミー級だな」
「正しくはアカデミー賞級ですよ。アカデミーだと学校とかそういう意味になりますから」
「そんなのどうでもいいんだよ。なあミラー五郎」
「だから違うって言って────」
『わしじゃよ』
突然警視からしわがれた声が聞こえた。
「……そういう演出はいらないぞ」
「自分は喋ってません!」
本当か? とても疑わしい。確かにこいつから声がしたはずだ。
『よくぞここまで気付いたな』
そう言って警視は……警視?
「ああっ」
情けない声とともに、警視からめがねが離れた。そしてそのめがねが宙に浮いている。
「こんなときに手品か? 余裕だな」
「なにもしてませんよ!」
『ふふふ……わしがミラー五郎じゃよ』
「「めがねが喋った!?」」
まさか、ミラー五郎の正体が警視ではなく警視のめがねだったとは。
「……めがねが喋ったのはこの際いい。なんであんなことをした」
『なにを言う。テロを行ったのはめがねに映ったおぬしらじゃよ』
「どういうことだ!?」
『鏡には全て正しく世界が反対に映る。だがめがねに映るのは、光とそれを遮る影だけじゃ』
「つまり我々の影の部分を社会に反映させたと?」
『ふふふ……』
不敵な笑いを残し、めがねは飛び去ろうとした。
「待て、最後にひとつ」
『なんじゃ? わしを捕まえようとしても無駄じゃよ』
「電車にバッファローをどうやって満載させた?」
呆れたようにめがねは去って行った。
新型テロリスト・ミラー五郎 狐付き @kitsunetsuki
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