片眼鏡かマスカレード あなたはどっち派?

タカナシ

「どっちが使いやすい?」

 都内某所の美術館にエジプトの秘宝、ホルスの氷が展示されている。

 透明度の高い青色の宝石は見るものを魅了した。

 だが、魅了されたのは、ただの客だけではなかった。


 どこからともなく、館内の防犯装置を切り抜け、音もなく床へと着地する白い影。

 男は顔をあげ、周囲を伺う。

 予定通り誰もいないことに安堵の息を僅かにもらす。


「さて……」


 男は顔に掛かっている片眼鏡に手を添えると、暗闇でも見える暗視モードに変わる。

 そのとき、男の前方より、黒い影が地面へと着地する。

 その男の顔にはマスカレードという目元だけ覆うマスクがつけられており、その男も暗闇でも見えるモードに変更する為か、マスカレードに手を添えた。


「うおっ……」


 先客がいたことに驚いたのか、小さく声を上げる。


 お互いがお互いを見つめること数十秒。


 同時に鼻で笑った。


「「あぁん!?」」


 お互いになぜ笑ったのか問い質すと。


 白い男は、


「変装の為だけのマスクなんかつけている怪盗がいるとはお笑いだ」


 黒い男は、


「片眼鏡だなんて、実用性のない眼鏡をさも使えますといってつけている怪盗がいるとは笑っちまうぜ」


「なんだと? この片眼鏡は古来より変装、そしてルーペの役割りまでこなす優れもの。貴様のオシャレにしか役に立たないマスクなんかとは訳が違う!」


「これはマスカレードですぅ! 仮にもお前も怪盗ならちゃんと分かれ! それから、片眼鏡なんて、少ししか顔が隠れないだろ! しかも、ルーペの機能とかいらないだろ昔から考えても!!」


「ルーペは必要だろ。お前、宝石の鑑定とか出来るのかよ? あ、確かに出来ない奴には必要ない機能だもんな」


「いや、肉眼で出来ますしぃ。百歩譲ってルーペとして使うにしても、現代じゃ色々な機能を付属出来るから、マスカレードの方が便利だし」


「はっ! こっちだって付属してるわ! しかも小型だから持ち運び安いし」


「こっちの方が多機能だって、怪盗七つ道具の店主が言ってたし! そもそも格好良さでは完全にこっちが勝っているし。機能、ビジュアルでマスカレードに軍配があがるしぃ」


「はぁ!? こっちにゃ、天下のアルセーヌ・ルパン様がついてるんだぞ。最近はキッド様もいるし!」


「はぁ、出た出た。片眼鏡派は何かというとルパン、ルパンって、そもそもアルセーヌ・ルパンは変装用に片眼鏡をつけていて、ルーペとしては使っていなかったぞ。それなのにルーペがどうとかでマウント取ろうとする時点でなんだよ」


「知ってますぅ!! ルーペを持ちだしたのは、お前らマスク派が良く機能でマウント取ろうとしてくるからだろぉ。ビジュアルでは圧倒的に敗者だということを分かれ!」


「ビジュアルでも勝ってますしぃ。P5とかジョーカーとかルパンレンジャーとかカッコイイしぃ」


「ふんっ、口喧嘩だけは達者だな。このままでは勝敗が付かなそうだ」


「ああ、やれやれだ。ここは怪盗らしく、どちらが先に盗むかで勝負!!」


――こほん。


 そのとき、咳払いがひとつ。


「私は四角いクールな眼鏡が一番だと思いますよ。知的に見えますし、何より日本人に良く似合う」


 白と黒、2人の怪盗の真ん中にいつの間にか、スーツ姿の男が立っており。


 ガチャン!


 白黒同時に手錠が掛けられた。


「あれだけ騒げば当然ですね。顔を隠す前に知能とモラルの低さを隠すべきでしたね」


 

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片眼鏡かマスカレード あなたはどっち派? タカナシ @takanashi30

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